皇海山で百名山の効果を考える
群馬にあるマイナーな山、皇海山(すかいさん・2147m)に登った。1日で登るには、未舗装の荒れた林道を20キロも走らないと登山口にたどりつけないという、アクセスの悪い山だ。しかし、朝早くからその林道を20台近くもの車が駆け抜ける。なぜそんなに人が集まるのか? 理由はこの山が日本百名山に選ばれているからだ。
私は百名山ハンターの知人に誘われて今回の山行に参加した。その知人曰く、「皇海山に登りにくる人は50山以上のレベルじゃないか?」。つまり、既に50以上の百名山に登っている人が来るような山だという。登山経験の浅い私は、数えてみるとこれが7つ目ぐらい。すれ違う登山客に「なんでわざわざ皇海山に来たの?」「あなた達もやっぱり百名山?」と尋ねられることがこの山の性格を表している。
ちなみにその知人は、自分が百名山ハンターであることを隠している。ミーハー的要素の強い百名山ハンターは、しばしば批判の対象にもされるため、そうやって隠す人も多いらしい。このへんの感覚が面白い。確かに、百名山だけを回る人たちは、観光地だけを点々と回るバスツアー客にも似ていて、浅はか感があるのは否めない。しかし、自分の登山経験が数値で表されるのは楽しく、山に親しむきっかけにも良い。むしろ批判されているのは、オーバーユースやマナーの悪化にあるようだ。山頂付近のヤブを歩き回ると、必ずいくつものウンコとティッシュに出会えることに、やはり何か疑問を感じてしまう。百名山に魅せられた多くの人たちと、こうした問題を真面目に考えることができたなら、百名山の魅力はさらに増す。