街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

本場は違うね、秋田秘湯めぐり

乳頭温泉・鶴の湯


温泉天国とも言われる秋田県で、八幡平(はちまんたい)のそばにある後生掛温泉(ごしょがけおんせん)に訪れた。ここには昔ながらの湯治村と呼ばれる施設があり、半年も前から宿泊の予約も入っているという。今でこそ温泉は観光スポットだが、かつては湯治場(とうじば:つまり温泉につかって病気を治すということだ)として発達してきたもの。難病をかかえた人たちが、不治の病も治るという山奥の秘湯を目指して、何日間も歩き、何日間も湯治場に滞在して体を癒したのだろうか。そんな像を思い起こさせるのがこの後生掛温泉だ。

風呂場は総木造の風格あるつくり。そういえば温泉に行って木の床を踏んだことはあまりなかったかも知れない。白い湯と白い湯気が充満し、とても良い雰囲気だ。露天風呂は視界がなくちょっと物足りなかったが、泥風呂や箱蒸し風呂などユニークな風呂が揃っており、十分楽しめた。

問題はこの後だ。旅費を節約する意味も含め、湯治村の「オンドル大部屋」に格安の素泊まり(1960円)を申し込んでみた。地熱を利用して床が一年中温まっており、リウマチや神経痛に効くという珍しい施設だ。受付で「すずらんの部屋になります」と言われ、指示通り古びた建物に入っていくと、そこには「鈴蘭寮」の看板が。嫌な予感・・・と思いつつ中に入ると、そこは未知の世界が広がっていた。廊下でつながったいくつもの小さな部屋に、おじいちゃんとおばあちゃんが十数人、布団を敷いて寝たり、小さなちゃぶ台を囲って手作りご飯を食べている。洗濯物が所狭しと干され、壁際には炊飯器や電子ジャーが並び、冷蔵庫まで持ち込んでいる人もいる。そこは既に生活の場となっていたのだ。

床は確かに温っかい。少し熱いくらい温っかい。私も布団を持ち込んで寝たのだが、やはり夜中に熱くて目が覚めた。寝返りを打っても熱さで30分おきに目が覚める感覚だ。我慢ならん!と結局別の広間に移動して寝たのであった。翌朝、温泉施設の周辺を散歩してみると、あたり一体は山火事のように蒸気が吹き上がっており、別府の地獄めぐりのような光景が広がっていた。そりゃ熱いはずじゃ! おじいさんの話によると、この熱さに慣れるのに三年かかるとのことじゃ。

次の日は、今度は田沢湖近くの乳頭温泉・鶴の湯に訪れた。なぜか通行人に丸見えの混浴露天風呂(写真)でゆっくり汗を流したは良いが、その夜、体中にじんましんが出てかゆくなる「硫黄かぶれ」にあった。私は硫黄にかぶれやすい体質らしい。硫黄かぶれは草津温泉に次ぎ人生二度目の経験であった。やっぱ本場は違うね。