街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

自休自足を考える

自休自足 2007/7月号 vol.18

 自給自足をもじって「自休自足」。そんな雑誌のタイトルを見て、いい造語だなぁと思っていた。20坪の畑を借りている僕の生活は、とても自給自足はできないけど、自休自足なら実現できているかも知れない。自分のペースで仕事をして、デスクワークに疲れると、緑を眺めて目を休めたり、畑に出向いて気分転換する。季節ごとの雑木林の散歩も心が癒される。

 その『自休自足』編集部から取材を受け、今月発売号に載せていただいた。「若者よ、田舎に急げ!」という特集の冒頭で、8ページも僕の生活が紹介されている。こんなに大きく取り上げてもらったのは初めて。取材日に驚いたのは、編集者も、ライターも、カメラマンも女性だったこと。しかも今時のデジタルカメラではなく、中判のフィルムカメラでの撮影。だからこそ、こんなに上品な誌面に仕上がるのだろう。ただ、僕の生活がどの程度読者の参考になるものか、ちょっと不安ではある。

 よく友人に、「自給自足を目指してるの?」と聞かれるが、そんな仙人みたいな生活はとてもできない。畑の収穫は、一年間に自分が食べる野菜の4分の1もまかなえれば十分だ。けれども、日頃自分が口にする食べ物を自分の手で作ってみたい、その苦労を知りたい、という思いは強くある(→昨日はこんにゃくを作った)。実体験によって、食べ物への感謝や、疑問、自然の摂理を知る。だから最近は、自分で調達できない肉類はあまり食べない。反対に、野菜につく虫を素手で殺す機会は当然ながら増えた。現代人はやたら牛肉や豚肉を食べるようになったが、そんなに食べるなら、一度は屠殺場を見学すべきだ。

 一方で魚は、食生活を考えるのに非常によい教材である。自分で調達して、自分でさばき、自分で調理する。川や海を汚せば、そこで穫れる魚も汚染される。僕が子供の時にいつも魚釣りをしていた海は、工場排水と港湾工事によって破壊され、ずいぶん魚が減った。今はどうだろうか。今日も僕はスーパーで夕食の魚を買いながら、あの頃の海を思う。