街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

山の上で過ごす一日;飯豊山

 高い山の登ると、空を撮りたくなる。子供の頃は、空なんていつでもどこでも見られると思っていたのに、空をきれいと思うようになったのはいつからだろう。きっと、汚い大人の世界に住むようになってからだと思う。・・・などと考えてみる。

 晴天の土日、ベテラン登山愛好家の友人と福島県飯豊山(いいでさん;2105m)に登ってきた。東北のアルプスとも呼ばれる飯豊連峰は、人里離れた奥深い場所にあり、川入(かわいり)の登山口からは標高差1600m、片道10時間かかるような山である。すなわち日帰り登山が困難で、今回は標高1800mにある切合(きりあわせ)小屋のテント場にテント泊して自炊することにした。テント、寝袋、マット、食糧など荷物は増えるけど、こんな山の上でキャンプするのは初めてで、ちょっとワクワク。

 朝5時に登山口を出発し、のんびり植物を見たり写真を撮りながら歩いて、14時半には切合小屋に着いた。背後には広大な万年雪がたたずむ爽快なロケーションだ。まだまだ明るいし、もっと先の山小屋まで歩ける気もしたけど、ベテラン登山愛好家いわく「山では15時までに移動を終了させるのが原則」らしい。テントを設置後、少し休んでから夕食の準備にとりかかる。メニューは定番のカレー。料理の手順や見た目にはこだわらず、きわめて大ざっぱに作るのだが、これがまたウマイ。17時30分には食べ終え、朝ご飯のセッティングを済ませたら、あとは寝るだけだ。

 夕食後に夕日を眺めることなんて、今まであっただろうか。この日の宿泊者は少なくとも50人はいたけど、大半の人は明るいうちに夕食を済ませ、思い思いに夕暮れを楽しんでいる。夕日を眺めたり、お酒を飲んだり、もう寝たり・・・。日没後は明かりがなくなるし、みんな朝早かったはずだから、電池や化石燃料を使ってまで夜更かししようとする人は少ない。本来人間は、日の出とともに活動を開始し、日没とともに就寝する昼行性の動物であり、山の上で一日を過ごすとき、僕らはその確かな記憶を取り戻すのかもしれない。

 真夜中、目が覚めた。時計を見ると20時30分。夜空の写真を撮りたかったのでテントの外に出てみると、明るい月夜だった。まだテント内で酒を飲んで“夜更かし”しているグループもあったけど、それ以外に物音は聞こえない。遠くに見える米沢の夜景は、明る過ぎなくて控えめな感じがいい。月が沈む頃を見計らって、3時30分に再び星空を眺めに外に出てみた。夕暮れを撮影した小高い丘に寝転がると、満点の星空が360度広がった。流れ星と、久しぶりに人工衛星を見つけた。星の数が多すぎて、天の川はどこだかはっきり分からないほど。4時になると、東の空が少し明るくなり始め、山小屋はにわかに活気づく。昨日のカレーがこびりついたコッヘルで雑炊を作り、空が完全に明るくなると同時に、僕らは再び歩き始めた。

【今日見た注目種】
アカモノ実、ガンコウラン実、コケモモ実、コメバツガザクラアオノツガザクラツガザクラミネズオウ、イワウメ、チングルマ実、イワナシ、クロマメノキ実、クロウスゴ実、マルバウスゴ、ウラジロハナヒリノキ、マルバシモツケ花、イイデリンドウ花、アカミノイヌツゲ、キャラボク、ヤハズハンノキ、ヒメヤシャブシ、ミネカエデ、タカネナナカマド実、オオバツツジ、ミヤマホツツジ花、ホツツジ花、リョウブ花、ノリウツギ花、ムシカリ実、テツカエデ、ヤシャビシャク、コエゾゼミ(虫)、アサギマダラ(虫)、ヒョウモンエダシャク(虫)、メボソムシクイ(鳥)、ウソ(鳥)、ミソサザイ(鳥)