街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

日本一美しい!? 大雪山の紅葉

 日本の紅葉は、大雪山から下ってゆく。北海道の最高峰・旭岳(2290m)を含む大雪山は、紅葉が日本一早いことで知られ、一説にはその美しさも日本一と聞く。三連休を避けて訪れた9月25・26日は、標高1500m前後が紅葉のピークを迎えていた。けれども生憎25日は雨。一瞬雨が上がったのを見計らって、大雪山の黒岳ロープウェイに乗ってみたものの、上に着くとまた土砂降りの雨。ちくしょう、と思いながら展望レストランで昼飯を食って時間をつぶしたり、ロープウェイ駅周辺を傘を差して散策していたら、突然雨が上がり、一気に雲が引いた。紅葉したチシマザクラの向こうに現れたのは、この時初冠雪を記録して白く染まった山々だった。

 翌朝、広い大雪山エリアの中でも紅葉名所として知られる高原温泉に向かった。昨日とは打って変わった青空。沼巡りと呼ばれる大小の池が連なるコースを歩き、一番はじめの大きな沼に着いたとき、確かに相当美しい景色を拝むことができた。赤や黄のナナカマドやウラジロナナカマド、ダケカンバが点在し、黒々としたエゾマツやアカエゾマツがキャンバスを引き締める。背後には、昨日の初冠雪で真っ白になった白雲岳や緑岳が顔を出し、風のない池に映る像はその美しさを倍増させた。息を呑む絶景とはこのことか。

 次に訪れた銀泉台は、標高が若干高くて樹林帯が少ないためか、既に紅葉のピークは過ぎ、半分は散っていた。それでも「日本一の紅葉」とパンフレットに唱われるだけあって、赤く連なるウラジロナナカマドや白い幹のダケカンバが、緑色のササやハイマツと相まって美しい。高原温泉とはまたタイプの違った美しさだ。

 さらに登り続け、標高1800m超の駒草平まで来ると、昨日の雪が足下にあちこち残り、冬山へと姿を変えつつある小泉岳と赤岳が目前に現れた。お花畑の草紅葉ももう終わりに近く、ウラシマツツジチングルマなどの赤色が所々に目についた。この時既に15時を回っており、登ってくる人も下りてくる人も自分以外にはいない。耳が痛いほど静まり返った大自然の中で、ヒグマ遭遇に注意を払いつつも、ナキウサギとオコジョと思われる小動物を一瞬だけ目にすることができた。

【今回見た紅葉】
ウラジロナナカマド(橙・赤)、ナナカマド(赤)、ダケカンバ(黄)、オガラバナ(橙・赤)、ミネカエデ(黄)、チシマザクラ(淡赤)、ウコンウツギ(黄)、クロマメノキ(赤・橙・黄)、チングルマ(赤・橙)、ウラシマツツジ(赤)