街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

山口県にUターンしました

 少し前の4月10日、約4年住んだ神奈川県秦野市(はだのし)のアパートを引き払い、山口県田布施町(たぶせちょう)の実家にUターンしました。山口県に住むのは高校生のとき以来15年ぶり。大人になって住むのは実質初めてなので、ゴミの出し方から、自治会の回覧板、地域の祭り、地元の飲み会や、近所の子供たちとの触れ合い、地元の行政、季節の花々・・・どれも新鮮で、「自分の故郷ってこんな町だったのか」と、発見と驚きの連続です。

 今は近所の休耕田を借りて、初めての稲作にもチャレンジ。完全無農薬でとりあえず自分が一年で食べるぐらいの米を自給できたらと思ってます。周りはのどかな田園地帯が広がり、本当に癒される景色。小学生の頃は何も考えずに遊び回っていたこの場所で、20年後に「えーとこじゃのう」と堪能しながら田んぼを耕すなんて、想像もしませんでした。

 Uターンして結婚? とよく言われるけど、残念ながらそうではありません。大学進学で上京した頃から、「家庭を持つ30歳前後でUターン」というビジョンを漠然と持ってました。地元への愛着が強いし、あらゆる面で一極集中している社会に疑問を持っているので、アンチ東京的な反骨心もあります。僕が関東(松戸、川崎、秦野)に15年間ほど住んで、個人的に感じた東京の「魅力」と「欠点」を挙げるなら、以下のような感じかな。

<魅力>

  1. 情報・文化の中心で日本の最先端に立てる。
  2. 仕事や出会いの可能性に満ちあふれている。
  3. 欲しい、見たい、行きたい、といった欲求を実現しやすい。

<欠点>

  1. 人や人工物が多すぎてストレスが多い。
  2. いろんな意味で環境が悪く、子育てをするような場所ではない。
  3. 仮住まいなので地域と密着する意識を持ちにくい。

 特に僕が最近よく感じていたのは欠点の3番。関東では森づくりや棚田づくりなどの活動にも参加してたけど、「自分はここにずっといる人間じゃない、いつかはいなくなる」という思いがあって、なかなか本腰で取りかかれなかったし、一緒に活動する人たちにも申し訳ないという気持ちが常にありました。やっぱり、自分が一生関わる場所に腰を据えてこそ、初めて本気で地域の活動に取り組めると思います。
 折しも僕の故郷では、28年来続く上関(かみのせき)原子力発電所の建設計画や、母校・麻里府(まりふ)小学校の廃校問題があって、今帰らなければ故郷が変わり果ててしまう状況にあります。最後に住んだ秦野は環境もよくて、空気の清々しさは山口より上と感じていたのですが、そんな故郷を離れて関東にいることが「逃げている」と感じたのも事実です。今帰らずにいつ帰る・・・そんな思いでUターンを決めたのでした。

 以前、既にUターンしている知人が、「田舎はつまらんと思っちょったら、面白い人がいっぱいおるけぇ、ぶち楽しいよ」と言っていたのですが、その言葉を今実感しつつあります。こんな田舎でも、高い志を持って様々な活動へと向き合う人たちがいろいろいて、田舎だからこそ、そういう人たちとすぐに接点ができ、次々と知り合うことができます。大きすぎて自分一人では絶対に動かせないと感じる都会に対して、田舎は一人一人が強い思いを持てば町全体が変わるかも、という可能性を感じるのも魅力なのかも知れません。これからは僕も、地方から最先端の情報・文化を発信していきたいと思います。