街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

六甲山で久しぶりの山登り

 関東出張からの帰り道、天気もいいことだし、どこかの山に立ち寄ろうと思い、いつか行こうと思っていた兵庫県の六甲山に登ることにした。六甲山といえば神戸の背後にそびえるシンボル。新幹線の新神戸駅から登山口が直結しているので、途中下車の登山に最適なのである。けれども、前に新神戸駅から六甲山系の摩耶山に登ったことがあるので、今回は神戸電鉄有馬温泉駅まで行き、そこから六甲最高峰(931m)を目指すことにした。

 有馬温泉駅に着いたのは11時過ぎ。古くからの関西有数の湯治場だけあって、ホテルやお土産屋がすごい。そんな温泉街を抜け、六甲山ロープウェイをくぐって紅葉谷道から登り始める。あー、何だか山奥に入るのが久しぶりで癒やされる。やっぱりたまにこうして森に入らないとダメだ、と実感した。樹木の種類はかなり豊富で、次から次へと現れる新緑の木々に、目を奪われる。ヤブウツギやシラキの地味な花の写真も撮りながら、ついつい足取りが遅くなってしまった。

 途中から「熟練者向け・危険」と書かれた白石谷コースに入り、崩れやすい急斜面を登る。両側を絶壁に挟まれてなかなか迫力あるコースだ。下界よりも季節の進行が約1ヶ月遅い山頂に近づくと、晩春の花が次々と現れた。カマツカヤマツツジモチツツジウラジロノキ、アキグミ、ヤブデマリ、ツクバネウツギ、コツクバネウツギ、コガクウツギ……天然の花畑だ。それに、ヤマヤナギの柳絮(りゅうじょ:綿毛のついたタネが風に舞う様子)もすごい。夢中で写真を撮っているうちに、時刻は4時を回ってしまった。

 誰もいない平日夕方の六甲山山頂で、お弁当の笹の葉寿司を食べ、足早に魚屋道(ととやみち)というコースを下り始める。六甲山はコースも豊富でいろんな脇道がある。途中で適当な小径に入ってみると、思わぬ方向に下っていってしまい、引き返すのも面倒だから、道なき場所をヤブこぎをして魚屋道に復帰したりもした。時間が時間なだけに少々ハラハラさせられたけど、このスリルは嫌いじゃない。

 林内が薄暗くなり始め、野生動物の活動時間に差し掛かり始めた頃、カサ、コソ、という物音を聞いて立ち止まった。リスだ。太いアカマツの垂直な幹を、ぴょんぴょん飛び跳ねるように上ってゆく。なんて身軽な奴だろう。さらにしばらく歩くと、今度は急斜面を下ってくる中型動物の物音。「こっちへ来い!」と双眼鏡を手に待ち構えたが、残念ながら物音は遠ざかって行った。恐らくイノシシだろう。単独登山で下山時刻が遅くなると、決まって獣たちが姿を見せてくれるのが、自然豊かな森の特典だ。

 今回歩いたコースは、イヌブナは多いもののブナ林はほとんどなくて、その代わりオオバヤシャブシが森全体に非常に多いことから、かつては広範囲がハゲ山だったと思われ、山全体が比較的若い林と感じた。ともあれ、18時過ぎに有馬温泉到着。久しぶりのワイルドな山登りで、心身が生き返った。さらに有馬温泉・金の湯に浸かって汗を流す。ふ〜、今日はやっぱり山に立ち寄ってよかった。

【今日見た注目種】
アリマウマノスズクサ(花)、ミヤコツツジヤマツツジ×モチツツジ、花)、オオツルウメモドキ、フサフジウツギ、ヤブウツギ(花)、ジャケツイバラ(花)、ベニドウダン(花)、シロバナウンゼンツツジ、ウスギヨウラクヤマナシ、キガンピ、コバンノキ、オノエヤナギ、ネコヤナギ、ウメモドキ、サワダツ、ケケンポナシ、フユザンショウ、ヤマイバラ、ミヤコイバラ、テリハミヤマガマズミ、ホソバタブ(花)、ソウシチョウ(鳥)、サンコウチョウ(鳥)、オオルリ(鳥)、ヤブサメ(鳥)、ホンドリス(獣)