街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

田んぼを作る!休耕田が潤うまで

 友人の紹介で4月に借りた田んぼ。農家の方に教えてもらったことに自分の考えを織り交ぜ、連日通いながら手を加えた休耕田は、見事に瑞々しい水田へと生まれ変わりました。5枚ある田んぼのうち、写真左側の田植えが完了している所が僕が担当する町(まち)です。面積1.2畝(120m2)、米1俵(60kg)も収穫できないぐらいの広さですが、田んぼ素人同然だった僕がこの3ヶ月間に学んだこと、試したこと、得た経験は大きいです。その軌跡を記録しておきます。


 ここは、5年間眠り続けた休耕田でした。草刈りは毎年行われていたようで、カラスノエンドウやスギナ、オヘビイチゴ、コメツブツメクサ、オランダミミナグサ、スイバなどが茂る草原状態でした。もともと湧水が多くてじゅくじゅくした場所で、田んぼの地下1〜2mには竹を敷き詰めて排水パイプが設置されており、その栓を開けることでようやく人が歩ける状態になっているそうです。

 4月16日、田起こしをしました。指導してくれる農家の方から耕耘機を借り、ロータリーをかけます。いきなり機械に頼ってしまいましたが、やっぱりエンジンの力はすごいです。畔(あぜ)の草刈りと田起こしをしただけで、田んぼの姿がはっきりと浮かび上がりました。


 5月2日と7日、種降ろしをしました。知人にもらった黒米(朝紫)の籾(もみ)を、田んぼの脇に作った苗代に直に播きました。既に前処理された籾だったため、根が出始めています。休耕田の表面をクワで削り、土をむき出しにした上に籾を播き、ふるいにかけた田んぼの土で覆い、枯れ草をかぶせます。試しに枯れ草をかけないゾーンや、ヒモを張らないゾーンも作ってみました。僕の田んぼは手で植えるので、育苗箱を使う必要はありません。


 5月10日、播いて1週間もすると2cmほどの芽が次々と生えてきました。感激の瞬間です。枯れ草をかけずに土をむき出しにしたゾーンは、生育が多少遅いようです。恐らく夜間の低温が原因でしょう。なお、6月1日に播種したヒノヒカリの苗代では、両者の差はほとんど見られませんでした。気温が上がったためでしょう。


 5月30日(28日目)には15cm近くに成長しました。水がたまりやすい場所(写真上側)は発芽・成長しなかった籾が多く、表面に水がたまならい程度の方が生育が良いことが分かりました。ひもは鳥よけが目的ですが、僕の田んぼではヒモを張らないゾーンも鳥の被害は皆無でした。ただ、籾の上に土をかぶせなかった場所は、スズメが食べてたみたいです。


 6月5日、田んぼに水を引きました。水を入れる前に再度全面にロータリーをかけ、あぜ塗りに備えてあぜ沿いの土は4本グワでさらに細かくしておきました。けれども、いざ水を入れ始めても水が増えません。どこからか抜けているのです。水底の土を4本グワで練り、粘土状にしてを畔に寄りかけるようにします。すると、ようやく水が溜まり始めました。そうやって、畔に沿って土を丹念に練りながら水を引いていきます。これはすべて手作業でやったのですが、重労働です。昔の人って偉いですね。


6月7日、粗掻(あらが)きをしました。前日にまとまった雨が降って一気に水がたまりました。水を溜めるだけでも3日間・・・ようやく水田らしくなり、嬉しくなります。粗掻きは、鉄車をつけた耕耘機で行いました。前日に人力で3時間かかった作業が、機械を使うと30分で済みます。いやぁ、機械って改めてすごいですが、いろいろ考えさせられます。


 6月8日、畔塗りをしました。前日に土を練っておき、我流で一部畔を塗ってみたのですが、翌日に農家の方に教わると、自分のやり方が全然ダメなことに気付きました。塗る土の厚さが薄すぎたのです(本当は10cmぐらい厚さ)。それに、さほど丁寧にやらなくても、コツさえ覚えればスイスイ綺麗な畔が作れます。これは楽しい! 出来上がった畔の一部に、枝豆も少し播きました。本掻きに備え、4本グワで田んぼ全体の土の偏りをなくし、ならしておきました。


 6月12日、本代掻(ほんじろか)きをしました。最後に古い戸板に石をのせて引っぱり、表面をならしました。田んぼで働かされる牛の気分がよく分かりました。こうやって土を水平にしておかないと、水につかる部分と島になってしまう部分ができ、水の管理や雑草対策が思うようにできなくなります。代掻きの意味ってこういう所にもあったのですね。自分でやってみて初めて実感です。


 6月15日、いよいよ田植えです。40〜45日経過した苗の成長はすこぶる好調で、丈は20cm超。分けつはまだしていませんが、5枚目の葉も生えている状態です。ただ、田植え直前に少しトラブルがありました。上の田んぼから僕の田んぼに水を入れていたのですが、どこかで水漏れしたのでしょう、前日の快晴時に水が全く入らなくなって完全にひからびてしまい、畔と底にひび割れが入ってしまいました。田植えの日の朝に農家の方が気付いて水を入れてくれたのですが、見回りの大切さを改めて痛感する出来事でした。ひびから水漏れしないことを祈りましょう。


 田植えは、30cm間隔で竹をつけた筋付け機を使い、その溝に沿って苗を植えていきます。雑草交じりの苗代から、クワで土ごと掘りとっては雑草と稲を取り分けて植えるのですが、これが結構時間かかります。箱苗の田植えに比べると、2倍近く時間がかかるかもしれません。その代わり、自然の土と風で育てた苗は、培養土と温室でぬくぬく育った苗よりもずっとたくましいと信じましょう。1本ずつ植えるゾーンと、2〜3本ずつ植えるゾーンを作り、両者の比較をしてみます。また、すじ間は30cmのゾーンと40cmのゾーンを作りました。今後の成長が楽しみです。


 また、田んぼの端っこに不耕起のゾーンを設け、この町だけは耕さずに雑草に交じって稲を植えてみました。不耕起栽培、いわゆる自然農は水のコントロールで雑草を抑えることが大事だそうですが、果たしてうまく成長してくれるでしょうか?

 5年間眠ってきた田んぼなのに、水を引くと沼ガエルたちがたくさん集まって来て、雨でも降れば喜びの大合唱です。田植えをする頃には灰色ゲンゴロウや貝ミジンコが水中を泳ぎ回り、田植え後はオタマジャクシ、姫ガムシ、ユスリカの幼虫なども次々姿を現しました。とにかくいろんな発見や変化が面白く、これからが楽しみです。田植え後の夕暮れの中でのワンショット。西日がまぶしく、充実感が漂います。