街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

馬島→佐合島の遠泳で溺れる者の心理を知る


遠泳のスタート地点・馬島

 地元の遠泳大会に参加してみた。山口県田布施町(たぶせちょう)麻里府(まりふ)の馬島(うましま)から、隣の平生町(ひらおちょう)佐合島(さごうじま)まで2.8kmを往復しようという小さなイベントである。遠泳に参加するのは小学校以来の20年ぶり。僕がいた頃の麻里府小学校では、対岸の阿多田(あたた)から麻里府の海岸まで約500mを泳ぐ遠泳大会が毎年あって、6年生のほぼ全員がこれを完泳していたのだが、もう中止になって久しいらしい。それを惜しんで復活したのがこの遠泳大会で、毎回3〜50人ぐらいの参加者があるらしい。

 今回の参加者は14人。トライアスロンに出場している人から、近所の漁師やおじさんまで様々。僕も同級生とともに参加を申し込んだはいいけど、最近は水泳なんてほとんどやってないし、1km以上泳いだ経験もあまりない。素潜りやスノーケリングは時々やってるけど、遠泳とは別物である。「まあ何とか泳げるでしょ」と軽く考えていたけど、4日前に1年ぶりにプールに行って1km泳いでみたら、もうヘトヘト。これはヤバイ・・・


手漕ぎの舟が同伴してくれるのだが、泳ぐ人の方が早い・・・

 遠泳当日の天気はあいにくの雷雨。中止かと思いきや、雨が上がったのを見計らって10時半にスタートした。水は冷たいというほどではなく、波も高くはない。けれども、思ったより体は浮かなくて、スタートから結構必死に手足を動かしてしまった。いつも海で泳ぐ時は、マスク(水中メガネ)にスノーケル、フィン(足ひれ)を装着しているだけど、今回はすべてなし。だから、なかなか進まないし、水面から顔を出すための浮力も必要で、想像以上に体力を使ってしまう。これでゴールまでもつのか?

 一方、よくプールに通っている友人はかなり余裕の表情。悔しいけど、プールで毎回2〜3km泳ぐという人にはかなわない。こっちは息が途切れるから、会話を楽しむ余裕もあまりない。ときどき仰向けに浮いて休憩するのだけど、波が顔にかぶって落ち着けないし、海水を飲み来んでしまうこともある。このままではヤバイと思い、やむを得ず同伴の舟に積んでおいたマスク&スノーケルを装着することにした。これで海中もよく見えるし、顔もあげなくてすむ。海中にはミズクラゲがたくさん泳いでいた。やっぱ海はこうでなくちゃ。


島は見えどもなかなか近づかない。これが遭難者の心理か(汗)

 中間地点を超えた頃から、体がかなり冷えて来た。既にリタイアした人もいるみたいだけど、先頭グループは数十m先に行ってしまった。同伴船は100mぐらい後ろにいてよく見えない。ゴールの島は見えるのだが、潮の流れがあってなかなか進まない。フィンを装着していないとやっぱり感覚がだいぶ違う。空はどんより灰色で、雨も落ちてきた。昨日は山でキャンプしてたから睡眠4時間・・・。とにかく気合いで泳ぎ続けたけど、気を抜くと今にも体が沈んでしまいそう。自分は海には慣れてるから溺れ死ぬことはないと思ってたけど、1km強を泳ぐのこんなに辛いとは・・・。遭難して溺れ死ぬ人の気持ちが痛いほどわかった。


ゴールの佐合島に到着。左から2番目に見える島がスタート地点

 12時過ぎ、2.8kmを泳いでゴール。足が届く水深に達した時の安心感。陸に上がった時の脱力感。急に重力を感じてフラフラになる。ここで雷が鳴り始めたので、復路は中止してみんな舟に乗って帰ることに。あぁそれでいい。どうせ復路は泳げなかったから、途中棄権にならなくてよかった。人生で一番辛かった今回の遊泳は、海の厳しさを知るとても良い経験になったのでした。