街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

日本最西端の2000m峰・白山の植生を見る

 今年はまだ高山に登っていなかったので、前から興味のあった石川・岐阜県境の白山(はくさん・標高2702m)に登ることにした。白山といえば、日本最西端の2000m峰で、花が豊かな百名山として知られ、多くの高山植物の西限地帯になっている。日本アルプスから離れたやや孤立した高山で、西日本寄りの日本海側に位置するので、どんな植生なのか見てみたかったのだ。

 前日は山口県を車で朝4時に出発し、福井県勝山市東山いこいの森にテント泊、翌朝7時に白山へと向かった。1日目のコースは、8割の登山者が使うといわれる別当出合の登山口をスタートし、観光新道を経て、750人収容の室堂の山小屋(上写真・標高2450m)に宿泊。2日目は最高峰の御前峰(ごぜんがみね)でご来光を仰ぎ、山頂周辺の「お池めぐり」をした後に、トンビ岩コースを下り、南竜ヶ馬場(みなみりゅうがばんば)、砂防新道を経て別当出合に下山する周回ルートだ。南斜面が中心で、それなりに地形や植生の変化があるよいコースだ。

 名山と呼ばれるだけあって、樹木も予想したより豊富で、亜高山帯の低木林には白山の名を冠したハクサンシャクナゲをはじめ、北日本のイメージが強いタカネナナカマド、オガラバナ、コマガタケスグリ、ミヤマアオダモなどが見られ、2000m以上のお花畑では、イワウメ、イワヒゲ、コメバツガザクラ、ホンドミヤマネズなども見られる。逆に分布してない高山植物(木本)は、ウラシマツツジ、キバナシャクナゲ、マルバウスゴなど。大半の樹木がちょうど果実が熟しており、ウラジロナナカマドやナナカマド、スノキ、ウスノキ、ミネカエデ、タカネザクラなどは、早くも紅葉し始めている個体も多かった(上写真)。山頂西斜面の千蛇ヶ池(せんじゃがいけ)に残る万年雪も見物だ。

 針葉樹は、山頂部にハイマツ林(冒頭写真)が広く分布するものの、それより低標高では低木状のオオシラビソ疎林があるくらいで、シラビソやトウヒは見られず、コメツガもごく少ない。標高約1600mより下にはブナ林(上写真)が広がり、河原には雪のような綿毛を飛ばしているドロノキや、オオバヤナギの林があるのも特筆だ。

 それにしても、今回の登山は天気ものどかな薄晴れでちょうどよく、久しぶりの高山風景は美しかった。ご来光は午前5:32。飛騨の高山盆地に広がった雲海を眼下に、北アルプスの焼岳方向から日が昇り、これまででも最高のご来光だった(上写真)。標高2700mの山頂には30〜40人の人だかりがあり、太陽が姿を現した瞬間は歓声があがる。ご来光とは、なぜこうも涙ぐむような感動があるのか不思議だ。理屈は関係なく、大自然の絶景に触れることで、私の心は癒される。

【上記以外の注目樹木】
アオノツガザクラ(実)、ガンコウラン(実)、チングルマ(実)、シラタマノキ(実)、コケモモ(実)、アカモノ(実)、クロウスゴ(実)、クロマメノキ(実)、ツガザクラ(花残)、ミヤマハンノキ、オオヒョウタンボク(実)、クロツリバナ(実)、ゴヨウイチゴ(実)、ベニバナイチゴ(実)、ダケカンバ(アカカンバ風)、ミヤマヤナギ、ムラサキヤシオ、シモツケ、ハリブキ(実)、キャラボク、クロベ、スノキ(大葉というほどではない)、アカミノイヌツゲ、ミヤマアオダモ、ミヤマシグレ(実)、カラスシキミ、ドクウツギ、ミヤマカワラハンノキ、ヤマモミジ(オオモミジに近い個体もある)、クロサンショウウオ(動物)、ホシガラス(鳥)、イワヒバリ(鳥)、ウソ(鳥)

紅葉ハンドブック

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