街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

風景をつくるセンダンの名木

開花中のセンダンの名木(山口県田布施町麻里府)


写真は、2011年5月に発売した著書『葉っぱで気になる木がわかる』(林将之著/廣済堂出版発行)に掲載したセンダンの木です。

何を隠そう、私が生まれ育った故郷に生えているシンボルツリー的な存在で、小学生の頃からこの木を眺めて通学してきました。当時は何の木か知らなかったけど、大きな丸い木の横を毎日歩いていたことと、その風景をよく覚えています。

センダンってどんな木?

センダンは西日本〜東南アジアやインドまで分布する暖地性の落葉高木で、立派な大木になります。漢字で書くと栴檀。「栴檀は双葉より芳し」(意味:香木の栴檀は小さな双葉の頃から香り高いように、大物になる人は幼い時から優れていること)ということわざを思い浮かべる人も多いようですが、その栴檀は熱帯地方に分布するビャクダン(白檀)のことで、日本に生えるセンダンとは別物です。

日本のセンダンには香りはありませんが、仏教で重宝される白檀にあやかってか、昔から社寺や学校に植えられることも多く、西日本を中心に見事な名木が見られます。名木というと、歴史のある木、つまり樹齢の高い古木や大木の印象がありますが、私は若くても美しい木や見事な木は、名木としての価値が十分あると思います。

写真のセンダンはまさにそんな木です。樹齢は110年以上と言われ、畑の中にポツンと1本生えているため、見事に枝を全方向に大きく広げ、衰退した印象もなく、壮大な樹形になっています。木がたくさん生える狭い日本では、こうした孤立木は意外と珍しく、普通は周辺の木や建築物が邪魔をして、何かしらいびつな形をしているものです。

その意味でも、このセンダンの樹形の美しさと存在感はピカイチで、名木と呼べると思っています。もし日本の「センダン名木100選」を選ぶなら、選ばれていいのでは? ちなみに『田布施の名木』(田布施町教育委員会発行、南敦著)には選ばれています。

伐採のピンチ!

そんなセンダンの名木が今、伐採されようとしています。この木の横に、公民館を建設するにあたり、邪魔になるから切るというのです。地域のシンボルとなるはずの公民館のために、なぜ現存するかけがえのないシンボルを撤去するのでしょう? 理解に苦しみますが、何とかこの名木を活かした公民館建設に見直すよう、田布施町にお願いしてみようと思います。応援よろしくお願いします。