街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

現代の熊野古道を歩く

conokix2004-08-26


この道だって熊野古道である。7月に世界遺産に指定されたばかりの熊野古道は、熊野三山と呼ばれる3つの神社をつなぐ長い道だから、現在は舗装されて車が走っている道だってその一部に含まれるのだ。しかし、私以外には誰も歩いていない。みんなバスでゴールまで駆け上がってしまうからだ。

熊野三山の一つ、那智大社に続く大門坂という階段に着くと、急に人影が増えた。階段沿いには鬱蒼とスギの大木が茂り、手軽に熊野古道の雰囲気を感じられるスポットになっている。那智大社まで大門坂を登ると、そこはおみやげ屋が建ち並んで観光地化している。その脇から、さらに奥の山へと続く熊野古道の続きがあるので、少し登ってみると、また誰もいなくなった。みんなバスで下まで降りてしまうからだ。

古道を歩きながら考えた。昔はアリの行列の如く参拝者がこの道を歩いたというが、なぜそうまでして歩いたのだろう。不便な時代だったから、神の支えが欠かせなかったのか? 娯楽が少なかったから、信仰を趣味代わりにしたのか? 歩くことはスポーツみたいなものだったのか? 私は神を信仰している訳でもないから、汗をかいて古道を歩いてきても、那智大社は眺めるだけで参拝しない。昔の人の気持ちがちょっと知りたかっただけだ。