街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

バラ色の印税生活?

「印税で遊んで暮らせるんでしょ?」
 年に1冊のペースで樹木図鑑を出版していると、そう羨ましがる人もいるが、現実は甘くない。売上100万部クラスの有名人と、自分のようなマニアックな本ばかり作っているのは訳が違う。
 印税はよくて10%だから、定価1,000円の本なら著者の収入は100円。図鑑のような専門書では、2〜3万部売れたら大成功といわれるが、印税収入だけでは厳しいのはおわかりだろう。取材費は自腹だし、ボーナスももちろんなし。誰もが羨むような「バラ色の印税生活」は、よほどの人気作家でないと叶わない夢だ。
 とはいえ、好きなことを職業にできるのは幸せ。旅行に出かけても、車窓から見える木を目で追い、温泉宿に行けば周辺の森を散策し、遊園地に行けば植えられた木をチェックするのが楽しい。それがすべて樹木図鑑づくりに結びつくので、仕事とプライベートの境はないし、旅費=必要経費だ。
 もう一つ、印税収入の利点を挙げるなら、老後の年金問題に危機感が薄いことか。一度本を出せば、絶版にならない限り印税が入り続けるので、著書が増えるほど未来の収入が安定する。お金のために本を書く訳ではないが、もしもバラ色の印税生活が可能なら、南の島と、爽快な深山の家を行き来するライフスタイルにしよう。



※この文章は2011年7-8月に山口新聞「東流西流」に掲載された連載記事を一部修正したものです。