葉っぱ図鑑をつくる
大きくなったら何になりたい? と尋ねられても、答えに困った。子どもの頃から木が好きだったわけじゃない。好きだったのはむしろ魚や虫で、自宅の学習図鑑セットは、魚図鑑と昆虫図鑑はボロボロ、植物図鑑はピカピカだった。
高校で進路を決める時、「自然」と「デザイン」の両方を大学で学びたいと思った。ところが、魚や虫に関わる学部を探しても、養殖や生態研究などデザイン性のない内容ばかり。そんな時、「造園設計」を見つけた。樹木を扱い、公園や庭、都市景観をデザインする分野だ。
千葉大学園芸学部緑地・環境学科に入学し、造園設計を専攻すると、住宅庭園を設計する実習があった。まずは植える木を選ぶのだが、木の名前なんてまったくわからない。市販の図鑑を開いても、載っているのは花や実ばかりで、目の前にある葉っぱだけの木は調べようがなかった。なぜこうも使えない図鑑ばかりなのか? そんな不満から、私の葉っぱ調べはスタートした。
とことん疑問を追究する性格がピッタリだったようだ。毎日ポケットに葉っぱを集めては名前を調べ、気づいたら造園設計より樹木調べに夢中になっていた。8年後、初めての著書「葉で見わける樹木」(小学館)を出版。当時は珍しかった葉っぱの図鑑は記録的なベストセラーとなり、子どもの頃には思いもしなかった道を進み始めた。
フィールド・ガイドシリーズ23 葉で見わける樹木 増補改訂版 (小学館のフィールド・ガイドシリーズ)
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※この文章は2011年7-8月に山口新聞「東流西流」に掲載された連載記事を一部修正したものです。