街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

夜道で轢いてしまったもの

 むしむしした深夜0時過ぎ、駅から自宅まで標高差50mの坂道をマウンテンバイクで必死に漕いでいた。木々に囲まれた薄暗い路面に、キラッと細長い何かが光った。液体? ビニール? それをマウンテンバイクのタイヤが轢(ひ)いたとき、「ペチッ」と音がした。けれどもそんなのは気にせず、ひたすらペダルを漕ぎ続けた。

 自宅に着き、汗だくの服をぬぎ、シャワーを浴びる準備をする。ふと、ぬいだ革靴に目を向けると、そこに奇妙にうごめく物体がへばりついていた。ナメクジのような粘液で覆われたその生物は、黄土色の胴体に3本の黒いすじが走り、頭部を切断されているのに、その切断面を持ち上げてイモムシのようにはいずり回っていた。相当グロテスクな姿だが、すぐにピンときた。

 オオミスジコウガイビル。大三筋笄蛭。扇形の頭を持ち、プラナリアと同じ扁形動物に属する外来生物。体長は時に50〜100cmに及ぶ。夜道で光った細長い物体は、餌のミミズやカタツムリを求めて彷徨うオオミスジコウガイビルだったのだ! 急いで自転車を確認してみると、ちぎれたオオミスジコウガイビルの肉片が、いくつもチェーンやペダル周辺に絡みついていた。その全てが、粘液を出して不気味に動いている。総延長は50cmに達するだろう。

 久しぶりに壮絶な光景を見た。コウガイビル類は、プラナリアと同様に、切断するとそこから再生するらしい。一瞬恐ろしい光景を想像してしまったけれども、翌朝、彼らはマウンテンバイクの下で干からびて死んでいた。暗い夜道の一人歩きは、お互い要注意である。



(画像サイズをやや控えめにしました)