街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

灯籠流しで出会った青い光

 山口県光市の拙宅前に広がる入り江、御手洗湾(みたらいわん)に面した普賢寺では、毎年この季節にご先祖様の魂を送る灯籠(とうろう)流しが行われている。この場所に住んで2年目、灯籠流しを見るのも2回目だ。昨年は風が強く、灯籠が思うように海原へ広がらなかったが、今年は満遍なく湾内に灯籠が広がり、神秘的な風景が広がった。

 計800個もの灯籠は、自然に分解される素材で作られており、ロウソクに火が灯され、船から海へと流される。湖面のように静かな湾内に、神聖な灯籠の光がゆらゆらと揺れる光景は、見ていて心が洗われる。

 入り江に沿った道路を歩き、堤防の切れ間から海をのぞいたその時、「えっ!!」と驚かされた。波打ち際が異常なまでに青く光っている。夜光虫(発光性のプランクトン)が多い海では、波打ち際が青く光ることは珍しくないが、それにしてもこの光の強さは尋常ではない。初めて見る数の夜光虫だ。

 海水を手ですくうと、手のひらに直径1、2ミリの光の粒がたくさんつき、点滅を繰り返しながら海へ流れ落ちてゆく。粒が大きいものも多かったので、夜行虫よりウミホタルのほうが多いのかもしれない。川で見られるゲンジボタルヘイケボタルの黄緑色とは違い、明らかに青〜水色の光である。

 にしてもすごい数! 海面を手でバシャバシャと波立てると、まるで蛍光塗料をばらまいたかのように強く光る。夜光虫もウミホタルも、刺激を与えると発光性の物質を出すので、波しぶきに反応しているのだ。

 住職さんによると、この時期は毎年たくさんの夜光虫やウミホタルが現れるという。海流がたまりやすい入り江で、ちょうど上げ潮の時間帯だったので、波打ち際に多数集まっていたのかもしれない。海の近くに住んでいる人でも、この美しい光を知らない人は多いだろう。灯籠流しとともに多くの人に見てほしい夏の風物詩だ。