街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

乗鞍岳でお手軽登山と紅葉

 高山の紅葉風景を楽しむために、北アルプスの南端、長野・岐阜県境にある乗鞍岳(3026m)に行ってきました。といっても、山頂付近は既に紅葉は終わり、雪がうっすら積もっています。今年の初冠雪は9月下旬、紅葉も昨年よりやや早いらしく、今は乗鞍高原と呼ばれる標高1500〜1800mあたりが盛りを迎えていました。なお、乗鞍岳といえば日本一高い場所まで車道が上っており、シャトルバスを使って標高2700mまで登れてしまいます。

 今回は標高1500mの乗鞍高原にあるペンション・カムスに宿泊。早朝にマウンテンバイクをレンタルし、紅葉真っ盛りの森を駆け抜けました。サイクリングロード沿いの樹木でひと際目を引いたのがハナノキの紅葉。赤や黄の変異が多く、葉裏が白く目立つことが特徴です。にしても、乗鞍ってハナノキは自生しないよね? 調べてみると、やっぱり乗鞍はハナノキは分布しないエリアで、サイクリングで見た木々は植えられたものでした。何もこんな自然豊かな場所に本来分布しない樹木を植えなくてもいいのに・・・。周囲にはニセアカシアやドイツトウヒ、園芸品種と思われるオオモミジなどが見られ、人為が多く加わった景色であることが分かりました。何でも鮮やかに見せたいのは分かりますが、センスの問題でしょうね。にしても、朝の自転車は手が冷たい。

 朝食後は乗鞍岳登山。乗鞍エコーラインのシャトルバスに乗り、2600m地点の肩の小屋バス停で降ります。ここから万年雪の残る雪渓の脇を通り、約1時間半かけて山頂に登りました。快晴で風もほとんどなく、快適な登山。まだ雪をかぶっていない穂高岳槍ヶ岳もよく見えます。日本一のお手軽3000m峰だけあって登山者は比較的多いですが、最高峰の剣ケ峰まで登って来る人たちはさすがにみんな登山らしい格好をしてます。普段着の観光客らは、どうやら畳平のバスターミナルすぐ横にある魔王岳という小さなピークに登っているようです。

 登山後は標高1600mの休暇村バス停で降り、牛留池周辺の紅葉を見ながら歩いて下りました。先月、私の新しい著書『紅葉ハンドブック』が発売になったばかりなのですが、山奥の森ではこの本では紹介しきれなかったマイナーな木々がたくさん見られます。同じ種類の木でも、個体差や環境差で色の変異がいろいろあるので、紅葉を見に行くたびに解説文を書き直したくなってしまいます。この秋は、そういう意味でいろんな紅葉を見て歩いておさらいしたいと思います。


【今日見たちょっとマイナーな紅葉樹木】
ムラサキヤシオ(黄;上写真)、レンゲツツジ(赤〜橙)、フウリンウメモドキ(薄黄)、ズミ(くすんだ橙〜赤、緑)、ヤハズハンノキ(緑)、ヒロハヘビノボラズ(橙〜赤)、オオツリバナ(赤、黄)、アズキナシ(黄)、ミズナラ若木(赤〜橙)