街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

四国南部で照葉樹林の絶景を巡る旅

 いつもブログアップが遅れるのですが、今回は5月11〜12日に旅した四国南部をレポートします。照葉樹林(しょうようじゅりん≒常緑広葉樹林)がもっとも美しいといわれる新緑の季節に、いくつもの絶景を見ることができましたが、中でも最も印象に残ったのが大堂海岸(おおどうかいがん・高知県大月町)から柏島(かしわじま)にかけての風景です。四国の南西端にあたるこの岬は、足摺岬同様に一大観光地になってもおかしくなかったのかも知れません。

【確認した注目樹木】アオギリ、ハマビワ、ハマキイチゴ実、ケサンカクヅル


 愛媛県南部の宇和島(うわじま・愛媛県宇和島市)の海です。南国雰囲気あふれるリアス式海岸が続き、少し川を上ればすぐ1,000m級の山へとたどり着ける、自然豊かな地域です。

【確認した注目樹木】オンツツジ花、トサノミツバツツジサザンカ、ヤナギイチゴ花


 愛媛県愛南町八幡神社(やはたじんじゃ・標高10m)には、四国で数少ないハナガガシの大木があります。社殿の左後方に見える木がそうですが、この孤立した社叢に幼木は見つけられず、真の自生と言える個体なのか疑問を感じました。とはいえ、歴史ある鎮守の森であることは確かですし、幹径40cm級のヤマビワの大木が多いことは特筆です。

【確認した注目樹木】ハナガガシ、イチイガシ、チシャノキ、ツルコウジ


 四国最南端の足摺岬(あしずりみさき・高知県土佐清水市)です。ここに来るのは小学生以来でしたが、岬先端部の宿泊施設が並ぶ集落は、沖縄に似た南国雰囲気もあってやっぱりいいですね。写真はシャリンバイの花です。

【確認した注目樹木】モクタチバナ、ハドノキ花、ショウロウクサギ、バリバリノキ


 足摺スカイラインを走行中に写した写真です。ブロッコリーのようにモコモコしたダイナミックな姿が照葉樹林ならではです。北日本で見られる落葉樹主体の夏緑樹林は、軽やかな爽快感が魅力ですが、南日本で見られる常緑樹主体の照葉樹林は、エネルギッシュなこの躍動感が大きな魅力です。

【確認した注目樹木】アカガシ、イヌガシ、シロバイ、ヒメアリドオシ花


 日本最後の清流とたたえられる四万十川しまんとがわ・高知県四万十市中流域の景色です。いやあ、シイの花と青緑色の川面も対比が鮮やかで、やっぱり美しいです。この流域特有の植物もいくつかあります。

【確認した注目樹木】シチョウゲ、トサシモツケ花、キシツツジ、カワラハンノキ


 四万十市四万十町境界の杓子峠(しゃくしとうげ・標高約460m)周辺の山並みです。四国の中でも高知県は全国有数の林業県で、人工林率は65%と全国平均の41%を大きく上回り、照葉樹林以上にスギ・ヒノキの人工林が多く見られます。伐採跡地もよく見かけますが、これは悪いことではありません。なぜなら私たちは大量の木材や紙を消費している訳で、その約74%を海外に依存して森林破壊問題を引き起こしている以上、できるだけ国産材で賄って再植林するのがベターだからです。

【確認した注目樹木】ヘツカニガキ、フジツツジ、オオフユイチゴ、シナアブラギリ


 今度は四国の東南端、室戸岬(むろとみさき・高知県室戸市)にやってきました。典型的な海岸段丘になっており、先端部の段丘上には四国八十八箇所最御崎寺(ほつみさきじ・標高170m)あり、周辺に良好な照葉樹林が広がっています。

【確認した注目樹木】ナギ、ヤマモガシ、イスノキ、カンザブロウノキ


 室戸スカイラインの途中にある展望台の駐車場に、サカキカズラの花がたくさん咲いていました。本州ではなかなか見られない暖地性のつる性樹木ですが、ここでは藪にまぎれて普通に生えています。ジャスミンのような良い香りがする花です。

【確認した注目樹木】サカキカズラ花、モチツツジ花、ホウロクイチゴ花、カンコノキ


 どうですか、石垣を覆ったこのアコウの根。カンボジア世界遺産タ・プロームではありませんよ、日本の四国で見られる光景です。室戸岬の段丘下の海岸部には、アコウなどの南方系の亜熱帯植物も多く分布しています。岬周辺の乱礁遊歩道(らんしょうゆうほどう)に見られるアコウ林では、大蛇のように岩を覆う気根の光景が圧巻で、ジャングルの雰囲気を味わえるお勧めのコースです。

【確認した注目樹木】アコウ、ウバメガシ、シマサルナシ、オオイタビ


 こちらは室戸市佐喜浜(さきはま・標高約25m)の道路沿いで見かけた低木です。何気ない木に見えますが、蕾をつけたズイナ(ユキノシタ科ズイナ属)という珍しい落葉樹で、これも南日本の山地で見られる暖地性樹木です。同属のコバノズイナは鉢植え庭木として知られていますが、コバノズイナは北米原産です。

【確認した注目樹木】ズイナ、ノリウツギ、ツクバネガシ、タイミンタチバナ


 旅の最後に、高知県東洋町の四郎ヶ野峠(しろがねとうげ・標高約480m)付近で見た景色です。濃緑のスギ人工林の尾根に、明るい黄緑色の広葉樹林が帯のようにぐねぐね連なっています。尾根部の自然林を残して保護したものと推測しますが、あまり見ない光景でユニークです。東洋町といえば、町長が補助金目当てで原発放射性廃棄物最終処分場地に立候補し、住民の猛反発を呼んで中止になったことで知られますが、そんな騒ぎが似合わない自然豊かで静かな場所です。

【確認した注目種】ウドカズラ、シマサルナシ、ツガ、ミミズバイ


 以上、強行スケジュールで一つ一つの森をゆっくり観察できなかったのが心残りですが、また改めて訪れたいと感じた良い場所ばかりでした。個人的に四国は好きです。