街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

難病;潰瘍性大腸炎を患うまで

 今年初め、私は潰瘍(かいよう)性大腸炎と診断されました。食の欧米化やストレスが原因といわれる難病で、日本では1980年代以降、20〜30代の若者を中心に年々増えており、患者数は10万人以上にのぼります。症状は、長期の下痢とそれに伴う出血や膿が特徴で、ひどい時は腹痛や頭痛、発熱を伴います。食生活や生活習慣を改め、肛門から注入する注腸薬や内服薬を長期的に用いることで病状は治まりますが、非常に再発しやすく、根本的な治療法も分かっていないので、国の定める特定疾患に指定され、調査研究および医療費補助の対象になっています。この病気にかかったことで、私は今までの乱れた食生活を見直し、より健康的なライフスタイルを心掛ける良い機会を得ました。悲観はしていません。しかし、悪化すれば大腸切除や大腸ガンに繋がることもあり、楽観できる病気ではないのも確かです。
 今回のブログでは、既に潰瘍性大腸炎を患っていると思われる人、その恐れがある人(=欲望のままに肉食生活を続けている人)にこの病気の存在を知ってほしくて、私が患った経緯と診察の様子などを記録しました。

潰瘍性大腸炎の概要と発症者/難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/009.htm

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 昨年7月、青森県下北半島を旅している時だった。薬研(やげん)温泉の旅館に着くや否や、トイレに駆け込んだ。旅の途中で腹を下してしまったようだ。毒木・ヒョウタンボク(上写真)の果実を毒味(口に含んで吐き出す)したのがまずかったのか、お昼に食べた貝の味噌焼き定食が当たったのか・・・。「まあ下痢はよくあることだから」と、特に気に留めることなく旅を続けた。

 帰宅後、数日たっても下痢が治らない。数週間たっても治らない。そのうち出血も伴うようになってきた。「ずいぶん強烈な食中毒だな・・・それに痔まで併発してしまった」。数ヶ月が経ち、今度はドロッとした半透明の粘液もお尻から出るようになった。排便時に加え、何もしていない時に思わず出てしまうこともあった。「なんだこれ!? これもイボ痔の症状か・・・」。病院が嫌いな上に、痔の治療なんて恥ずかしくて受けたくない。そこで、市販の痔用の座薬「プリザエース」を初めて買ってみた。これを3日間ぐらい使うと、見事に出血がおさまった。「なんだ、結構簡単に治るんだな」。けれども、大便時に長時間力んでいるいると、また出血することがあった。トイレは5分以内と決めて、とにかく無理に排便しないよう気をつける、「これがイボ痔対策のポイントだ」と・・・。

 そうこうしているうちに、最初の発症から約6ヶ月。下痢などの症状はほぼ完全におさまった。そう、一度は自力で潰瘍性大腸炎を治した(緩解期を迎えた)ことになる。この間、僕の食生活にも変化があった。3年前から始めた畑作りのお陰で、家に野菜があふれるようになり、「よし、自分が口にする全ての食べ物を一度自分で作ってみよう」と思うようになった。そう考えた時に、肉だけは自分で調達できないことに気づき、できるだけ肉を食べない食生活を始めたのである。結果的には、これが偶然にも自然治癒に結びついたのだと思う。

 ところがその4ヶ月後、また下痢が再発した。今度は関西地方を旅して、山口県の実家に帰ったときだった。自炊中心の僕は、自宅では肉を食べないようにしていたけど、外食時にはこれまで通り肉を食べていた。即ち、旅行中や実家に帰ったときは肉中心の食事に戻るのだ。その結果、前回と全く同じ症状になってしまった。特別ひどい下痢ではないのだが、何かを口にする度にトイレに駆け込みたくなり、多いときは1日4、5回以上も下した。痛みやつらさはないけど、お腹は一日中グーグー、キュルキュルとなり、ガスがたくさん発生している気がする。特に寝床についた時に、その音はよく耳についた。

 約10日間の旅行&帰省を終え、久しぶり自宅に戻った日の夜。僕は就寝前にウィスキーのジンジャーエール割を1杯飲み、ほろ酔い気分で寝た。翌朝目覚めた時、症状は急変していた。頭がひどくクラクラし、間違いなく熱がある。38度ぐらいだったと思う。「これはおかしい。食中毒なんかじゃない」。ようやくそう確信し、近所のおばちゃんから教えてもらった、評判のいい消化器科の先生がいる病院(秦野市・くず葉台病院)に行った。混んだ待合室で1時間半も待たされ、熱はさらに上がった。看護士に訴え、順番を早めてもらった。初老のその先生は、症状を聞いて僕のお尻に指を突っ込むと、「ほら、ドロっとしたウミと血がついている」と、納得した様子で僕に見せた。潰瘍性大腸炎の疑いがあると言った。

 3日後、大腸の内視鏡検査を行うことになった。前日は流動食、当日は何も食べずに下剤を使って腸内を空にし、弱い麻酔をかけた上で、直径1.5cmの内視鏡を肛門から1m前後も挿入するのである。不安いっぱいの僕の横で、モニタに写し出される僕の大腸内壁。赤い血と白いウミがまだら模様についているのが見えた(イラスト左。右はほぼ回復した状態)。「ほら、これがそうだよ」と先生が言っている。それより先は意識が遠のいてよく覚えていない。内視鏡が入ってくる違和感は感じたけど、痛みやつらさはなかった。検査の結果、初期の潰瘍性大腸炎と確定した。先生は、「僕の所に来て君はラッキーだよ。潰瘍性大腸炎はまだ診察経験の少ない医者が多いから、気付かない場合もあるからね」と言った。病名が判明し、しかも軽症で安堵した一方で、看護士さんに「一生付き合う病気ですよ」と言われたのが、ずしりと重かった。

潰瘍性大腸炎を患う前後の食生活については、12月27日の続編で書きました。