街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

秋の石鎚山と面河渓の樹木観察ツアーはいかが?

 季節外れの写真を載せますが、これは昨年10月23日に四国の石鎚山(いしづちやま)、面河渓(おもごけい)、しまなみ海道を訪れたときの写真です。ここを訪れた理由は、今年の10月18日から3日間、当地で樹木観察ツアーの講師を務める予定だからです。主催は、植物観察ツアーを多数企画している旅行会社・新和ツーリストさん。まだ定員に達していないので、興味のある方はどうぞご検討お願いします。ちょっと高めの料金ですが、その分どっぷり濃厚な樹木観察を楽しめるよう、私もがんばります。以下に、ツアーの行程と内容をご紹介します。

 【旅行期間】2011年10月18日(火)〜20日(木)
 【旅行代金】118,000円(食事:朝昼夕各2回)
 【集合・解散】羽田空港松山空港集合・広島空港解散も可能)
 【最小催行人員】15名
 【同行者】ツアーリーダーおよび講師林将之
 【申込・問合せ】新和ツーリストにパンフレット請求して下さい。


 出発地は東京の羽田空港で、飛行機で愛媛県松山空港にひとっ飛びします。バスに乗り換え、まずは市内にある松山城の城山を軽く散策します。ここはコジイやアラカシ主体の自然性の高い照葉樹林で、ホルトノキやクスドイゲなどの暖地生常緑樹も観察できます。続いて、西日本最高峰の石鎚山(1982m)に向かい、石鎚スカイライン(上写真)で、ウリハダカエデやシロモジなどの美しい紅葉を眺めます。宿泊は、標高1500mの絶景地にある国民宿舎石鎚か、爽快な渓流沿いにある国民宿舎面河を予定しています。


 2日目の午前中は、石鎚山登山口の土小屋(つちごや)周辺を散策し、亜高山の樹木を観察します。ここはウラジロモミやブナの林が広がり、西日本の高山特有のナンゴクミネカエデや、朱色の紅葉が美しいコミネカエデなどが観察できます。午後は山麓の面河渓(上写真)に移動し、奇岩のそびえる渓流沿いを歩きます。ここも自然林がよく残って樹種が豊富で、ヨコグラノキ、メグスリノキ、クロソヨゴなどの珍しい木も観察できます。夜は、しまなみ海道の起点である今治市内の湯ノ浦温泉ホテルアジュールに泊まります。


 3日目は、四国と本州・広島県を結ぶ、しまなみ海道を渡ります。一帯はいくつもの島々が連なる瀬戸内海の中心地で、日本有数の乾燥地帯で、山火事多発地帯でもあります。途中の生口島(いくちじま)などで下車して、乾燥地や海辺の樹木と、滅多に見る機会のない山火事跡地(上写真)を観察してみましょう。備長炭で知られるウバメガシの林や、ユキヤナギの仲間で岩場に自生するイワガサも観察できると思います。帰りは広島県に渡って広島空港から羽田に帰ります。

 以上です。コースや観察する樹木は変更する可能性もありますが、比較的短い距離をゆっくりハイキングする行程です。樹木好きの皆さんに喜んでいただけるよう、盛りだくさんの内容でお待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いします。(※お申し込み希望の方は新和ツーリストへ資料請求して下さい)

広島で個展『葉っぱスキャンワールド』開催中

 準備や宣伝が遅れてドタバタでしたが、広島市植物公園にて5月28日から6月9日までの2週間、私がこれまでスキャンしてきた植物スキャン画像の展覧会『葉っぱスキャンワールド 〜スキャンされた植物が魅せる癒しのアート』を開催しています(詳しい紹介はこちら)。この規模での個展を開催するのは、08年に神奈川県秦野市で行って以来2度目で(前回の様子はこちら)、ご好評いただいた前回と同様に約35点のスキャン作品を展示し、約10点を新作と入れ替えました。中でも今回の目玉は、人間サイズに拡大出力したクサソテツ(山菜名コゴミ)。訪れたお客さんは、皆さんその立体感と迫力に驚いてくれます。


 会場内には、展示作品と同じポストカードや、スキャン画像を多用した著書(サイン入り樹木図鑑)も展示販売中です。山口県光市の流木アーティスト・田中陽三さんからお借りした流木や、植物公園の温室などから拝借した生の葉っぱも飾って、相方のデザイナー・keikoさんの協力を得ながら、みずみずしい空間を演出しました。屋久島の自然音をBGMに、癒しの空間を堪能していただけると思います。


 今回は、春夏秋冬の四季ごとに作品パネルの色や素材を変えてみました。春は白、夏は薄緑、秋はベージュ、冬はグレー。普通の写真や絵と違って、スキャン画像は白バックが基本で、鮮明な立体感が特徴なので、立派な額縁に入れるのではなく、シンプルなリアル感を重視しています。また、スキャン画像をTシャツにプリントした試作品も展示しています。


 今回の展示で人気を集めた作品の一つが、この「冬芽(ふゆめ)の顔」です。冬芽とは、木の枝についた冬越しするための小さな芽のことで、葉痕(ようこん)と呼ばれる部分が人や動物の顔に見えることが多く、予想外の可愛さに子どもも大人も喜んでくれます。なお、この冬芽の顔は、拙著『冬芽ハンドブック』の裏表紙にもなっています。


 もっと早くブログの更新や個展のご案内ができればよかったのですが、3.11の東日本大震災で仕事に集中できなくなり、新しい著書『葉っぱで気になる木がわかる』(廣済堂出版・5月26日発売)の制作が遅れて個展の準備とも重なってしまいました(汗)。広島市植物公園はちょっとアクセスが悪いこともあり、広報不足と相まって客足は疎らですが、今後も東京やその他の都市でも開催できればと思っているので、関心のある方はどうぞ声をかけて下さい。なお、前述の新刊は、樹木鑑定サイト「このきなんのき」を元にしたQ&A形式の新しいタイプの樹木図鑑なので、こちらもどうぞよろしくお願いします。


葉っぱで気になる木がわかる

葉っぱで気になる木がわかる

冬芽ハンドブック

冬芽ハンドブック

一度は見たかった秋吉台の山焼き

 新燃岳噴火!? 山火事!? いえいえ、これは日本最大級のカルスト台地として知られる、山口県美祢(みね)市の秋吉台(あきよしだい)の風物詩です。カルスト台地というと、緑の草原に白い石灰岩がたくさん突き出た風景がイメージされますが、この風景は「山焼き」と呼ばれる火入れ作業を毎年行うことで維持されているわけで、放ってておくと(写真手前の黒い部分のように)森林化してしまうはずです。

 秋吉台では山焼きは毎年2月に行われており、全国各地のススキ草原の名所でも、同じようにこの頃に火入れが行われているものと思います。僕は一度も火入れの様子を見たことがなかったので、山口県民としてぜひ秋吉台の山焼きを見ておきたいと思ったのです。

 当初予定の2月20日が積雪のため延期となり、その後晴天が続いた2月26日に決行されました。火入れ1時間半前の朝8時に到着すると、最寄りの駐車場は満車だったものの、秋芳洞に潜る地下エレベーターの駐車場はまだスカスカ。山焼き見学の一等地である、カルスト展望台の最前線は三脚に陣取られていましたが、意外と人が少なくて、何時に来ても間近で炎を見ることができるようです。

 火入れ開始。はじめは遠くで煙が上がるだけでしたが、やがて一般見学者が入れるエリアの目の前にも火が放たれます。パチパチッという大きな音と共に、乾燥したススキやネザサをはじめ、ハギなどの低木類も次々燃えていきます。写真中央が大きくくぼんでいるのがお分かりでしょう。これはドリーネと呼ばれるカルスト地形特有のくぼみで、石灰岩が雨水で溶けてできるのですが、この底まで火が達すると、勢いが一気に増して炎が斜面を駆け上がります。圧巻でした。

 こんなに大きな炎を見たのは初めてかも知れません。本能的にちょっとドキドキしてしまうのが不思議です。でも、この感覚はあながち間違っていなかったみたいです。というのは、山焼きの翌週に「夜の山焼き」というイベントが行われるのですが、そのために若竹山と呼ばれるエリアを燃やさず残しておくはずだったのに、この日は例年になく火の勢いが強く、その若竹山まで燃えてしまったみたいです。

 これが山焼きがほぼ終了した11時頃の写真です。若竹山周辺に草原が少し残っていますが、もう手遅れだったみたいです。数日後、新聞の片すみに「夜の山焼き中止」の見出しが載っていました。悲しいかな・・・でもすごかった、山焼き。

 ちょっと気になったのは、この山焼きの意味や歴史を説明する資料が現地になかったことです。山焼き終了後に秋吉台科学博物館を訪ねてみましたが、山焼きを説明する資料はありませんとのこと。係員の説明によると、山焼きの歴史は岩石の分析から約300年前頃からと推定されており、かつては屋根葺きや飼料などに使うカヤを生産する目的で火入れが行われていたそうですが、今はカヤの生産はごくわずかになり、もっぱら景観維持(草原状態を保つ)のために行っているとのことでした。昔はカヤ(ススキやチガヤ)を生活に取り入れていたこと、火を入れないと草原を維持できないこと。この山焼きイベントを通して、自然や文化のことをもっと多くの人に知ってほしいものです。

【今日見た主な樹木】
タブノキ、クスドイゲ、ナンテン、ハゼノキ、エノキ、クヌギ、コナラ、ニガキ、ヤマザクラ、ヤマグワ、マユミ、アオキ

中四国・冬の低山巡り

 真冬の瀬戸内海は水温が外海以上にしっかり下がり、浅場では魚がめっきり釣れなくなることが分かったので、釣りはしばらくお預けです。という訳で(はありませんが)、冬は森に行きましょう。今冬に訪れた低山の記録をつけておきます。


鯛ノ峰山口県周防大島町・標高212m・12月26日)瀬戸内海の絶景を見下ろす壮大な岩壁が圧巻です。
【注目種】クスドイゲ、フユザンショウ、イワガサ、カシワ、カシワ×コナラ、イブキ、ホウロクイチゴ、ホルトノキ、ノグルミ、サンショウ、ジャケツイバラ、ビワ(逸出)



虎ヶ岳山口県周南市・標高414m・1月1日)木を見に行ったというよりは初日の出ですね。雪がうっすら積もってました。
【注目種】クロキ、ハイノキ、シャシャンボ、ビロードイチゴ、ハゼノキ、タブノキ、ザイフリボク



操山岡山市・標高169m・1月10日)岡山市街にほど近い公園にあり、快適なハイキングコースが張り巡らされています。
【注目種】コジキイチゴ、ナナミノキ、タラヨウ、ウバメガシ、カナメモチ(植栽多い)、クチナシ、ガンピ、ケテイカカズラ、常緑コマユミ



武田山広島市安佐南区・標高410m・1月18日)広島市中央部にあり市街を見下ろせる山頂が快適です。雪が10cm近くありました。
【注目種】シロバナウンゼンツツジ、リンボク、ナナミノキ、ウワミズザクラ、シラカシ、ヒメヤシャブシ(逸出)、ウリハダカエデ、ウリカエデ、ケテイカカズラ、ウソ(鳥)



遠石八幡宮社叢山口県周南市・標高20m・2月3日)この日は節分でした。社叢は非常に小さいのですが貴重な木が残っています。
【注目種】シイモチ、ヤマビワ、タイミンタチバナ、コバンモチ、ミミズバイ、モチノキ、スダジイ×コジイ(中間型)、サンゴジュ、イヌエンジュ、ケテイカカズラ



徳島中央公園 城山徳島市・標高61m・2月5日)徳島城跡がある良い森ですが、至る所にこの看板が目についたのは残念です。
【注目種】ムクロジ、アラカシ×アカガシ、ハドノキ△、クスドイゲ、マルバウツギ、ホルトノキ、マサキ



蒲生田岬とその周辺徳島県阿南市・標高0-50m・2月6日)四国最東端です。植生は単調ですが風衝樹形の木々がすごいです。
【注目種】ウバメガシ、ハマヒサカキヤブツバキ、モチノキ、マサキ、ヒメユズリハトベラクロマツ、アコウ、カジイチゴ、オオムラサキシキブ、ヤブニッケイ、シロダモ、キブシ、カンコノキ、ホウロクイチゴ、サカキカズラ、タヒバリ(鳥)



薬王寺社叢とその周辺徳島県美波町・標高50-100m・2月6日)南国の森に行くとこの珍木「操の木」に出会えます。
【注目種】ミサオノキ、ヤマビワ、カンザブロウノキ、イスノキ、タイミンタチバナオガタマノキクスノキ、シロバイ、アラカシ×アカガシ、モチツツジ、コジキイチゴ、ユズ(逸出)



窓ヶ山広島市安佐南区・標高710m・2月9日)広島市街を見下ろせる岩峰で、道なき急斜面を下っていると分布上貴重な木にも出会えました。
【注目種】イヌザクラ、シオジ△、シイモチ、イヌガシ、ツクバネガシ、ユクノキ、リンボク、ハイノキ、タムシバ、フウリンウメモドキウラジロヨウラク、ベニドウダン、バイカツツジ、ダイセンミツバツツジ、ヤマシグレ

チヌの神様、舞い降りる

 チヌ、標準和名でいうクロダイといえば、陸釣りで狙う大物魚の定番で、小学生の頃から憧れていた魚だ。20cm級のチヌなら、アジ狙いのサビキ仕掛け(エビなどに似せた擬餌針を多数垂らして釣る方法)でも時々釣れるけど、40cm級となると夢の世界だった。

 1月6日、そのチヌがとうとう釣れました! それも2匹連続で、44cmと40cm。いやぁ、嬉しいものです。その気持ちがこの勝ち誇った顔に表れてます。本格的な釣り人に言わせれば、「あぁ、チヌね」という程度かも知れませんが、遊び程度に雑魚しか釣ってなかった僕にとっては、これは大きな出来事。いよいよ釣りの醍醐味を知る領域に入ってきた感じかな。
 ちなみにこのときの仕掛けは、ジェット天秤とカレイ仕掛けの針に、ボイルのオキアミをつけたもの。隣でオキアミボイルをエサに青物(ブリ?)を狙っていた釣り人たちが、釣れないから帰るといって余ったエサをくれたので、それをつけて投げてみると、1投目で44cm、2投目で40cmが掛かったのでした。エサをくれた彼らもすぐ駆け寄ってきて、うらやましそうな表情。もらったオキアミボイルで釣ったと話すと、愕然としてました。つまり、彼らが中層で多数バラまいてくれたオキアミボイルが底に沈み、それを食べにチヌが群がっていたのでしょう。こんな釣り方もあるものだと、いい勉強になりました。

 当然ながらチヌ君は、こうなる運命にあります。家に持ち帰ってもなかなか死なないので、感謝の祈りを捧げて、脳みそを包丁でゴリゴリ突いて絞めます。釣りと料理をやっていると、こうした命の恵みの有り難さも実感できます。出来上がった刺身は、さすがにボリュームたっぷりで、歯ごたえもプリプリ! 釣り人ならではの特権を堪能したのでした。

 翌日は、もう1匹のチヌ君で瀬戸内郷土料理(らしい)の「ちぬめし」を作りました。ネットで知って初めて作ったのですが、実に美味くてオススメ。レシピは簡単。チヌを3枚におろして骨を取り除き、塩を強めに振ってしばらくおいた後に洗い流します。塩少々、酒少々、昆布とともに、気持ち少なめの水でセットした炊飯器に入れて炊きます。シンプルですが、身をほぐして食べると鯛めしに劣らず美味で、冷めてもおいしいです。

 実はこのチヌが釣れる前に予兆がありました。正月3日に周防大島なぎさ水族館で買った「チヌストラップ」を携帯につけると、その日と翌日に、それまでほとんど釣れなかったチヌ(20cm級のキチヌですが)が何匹も釣れ、2日後には今回の大チヌが釣れたのでした。新年早々に舞い降りてきてくれたチヌの神様に、改めて感謝☆

不思議なヒヨドリの渡りとアカツクシガモ飛来

 ヒーヨ、ヒーヨ、ヒーヨ・・・

 海を見渡せるベランダで朝食を食べていると、上空から聞き慣れた声が聞こえてくる。暖を求めて南方に渡るヒヨドリの群れだ。その数、ふつう200羽、大きな群れでは600羽におよぶ。9月下旬から10月下旬にかけては、荒天日を除いてほぼ毎日、我が家の上空を数十もの群れが渡った。時間帯は7〜8時が最も多く、多い日は1日5,000羽にも達しただろうか。

 我が家のある山口県光市付近からは、瀬戸内海を隔てて九州の国東半島が見渡せる。ヒヨドリたちは、決まって東の海岸線から飛んできて、九州方面に突き出た小さな半島(室積半島)を巻き込むように方向を変え、大海原へと飛んでゆく。すべての群れが同じルートをたどり、本州から九州へと渡っているように見える。彼らはどこからどこへ行き、なぜ皆がこのルートを知っているのだろうか?

 ヒヨドリは秋と春にほぼ日本国内で移動する(渡り)ことが知られているが、そのルートや距離はよくわかっていないらしい。また、九州など暖地の個体は移動しないというから、冬は九州の個体密度が増え、寒地や北海道のヒヨドリがいなくなることになる。我が家の上空は、ちょうど本州と九州の最短ルートにあたる(関門海峡を除く)ため、中国地方のヒヨドリたちの重要な渡りルートになっていると推測できる。最も身近な鳥でありながら、不思議で興味深いものだ。

 12月23日にも、20〜30羽の小さな群れを見た。今年最後の渡りか。思わず「がんばれよー!」と声をかけた。

 12月27日の昼過ぎ。地元の山口県田布施町で買い物をした帰り道、買い忘れがあって川沿いの道を引き返していると、何やら見慣れぬカモが1羽いる。珍しい鳥に違いないと思い、車中からコンパクトデジカメで撮影。車を降りてさらに近づこうとすると、飛んで逃げた。その独特の色は、一度見たら忘れられない美しさだ。

 帰宅して図鑑やネットで調べると、すぐにアカツクシガモの雌だとわかった。ユーラシア大陸に生息し、冬鳥として稀にごく少数が日本にも飛来するらしい。これは貴重だと思い、夕方に再度現地に訪れると、アカツクシガモは同じ場所にいた。今度は多少ズームのきくデジタル一眼レフで撮影し、土手に降りて近づこうとしたが、やはり警戒心が強いみたいで飛び立ってしまう。あまり刺激しないほうがいいみたいだ。

 この田布施川は、シジミやアユも棲むといわれる穏やかな川だが、下流には工場地帯があり、ここ20年の河川改修で無骨なコンクリート張りの護岸も増えた。特に自然豊かな川という印象はないが、カモ類の飛来は比較的多いようで、中上流部にはゲンジボタルが棲み、河口部にはカブトガニも生息する。地元に住んでいると何でもない川だが、こうした希少種の存在を知ることで、この自然環境を守ってゆく意識が高まればと思う。アカツクシガモの飛来は、翌日以降に地元のニュースや新聞で紹介された。

山口の海に戻ってきた

 長らくブログが止まっていた間に、海がよく見える新居に引っ越した。といっても、海が少し見える実家から、車で10分しか離れていない場所だ。仕事場は実家にそのまま残してあるから、海を見ながら10分の通勤をする日々。無駄なことをしているようだが、もういい歳なんだし、親元を離れて人生初のマイカー通勤をするのもいい経験だろう。それにしても、子どもの頃から当たり前に見ていたこの海。改めて毎日眺めていると、すさんだ心が洗われるようだ。


 海に近づいたのは住まいだけじゃない。最近、釣りにハマっている。釣りは小中学生の頃によくやったけど、大人になってからは数えるほど。それを今は連日のようにやっている。上は地元の麻里府港(山口県田布施町)での釣果。サビキ仕掛けで20cm前後のアジやクロ(メジナ)、タナゴなどが釣れ、砂地に投げればキス、それにカレイも釣れた。深場には小さなメバルカサゴ、マダイもいる。おっと、写真の魚は10cm程度のリリースサイズだけど、今回は特別サンプルのため持ち帰りました(^^ゞ 夜になるとアナゴも結構釣れるからおもしろい。


 アナゴ狙いの夜釣りをしていると、ウミケムシという毛虫のお化けみたいなのが釣れることがある。こいつは夜行性のゴカイの仲間で、釣りエサの本虫(イワイソメ)やアジの切り身を丸呑みする、恐るべし外道。毒のある無数の剛毛を流れるように動かし、海面近くを泳いだりもする。釣り人や漁師さん以外には一生知られないであろう不思議な生き物だが、これも多様な生命を育む海のおもしろさだ。


 釣りの楽しさは、釣った魚を食べられることにもある。潰瘍性大腸炎で肉が食べられない僕にとって、新鮮な主食を大量調達できる釣りは、趣味の域を超えている。ただ、新鮮な刺身や焼き魚、煮魚は、子供の頃から嫌というほど食べてきたから、内陸の人が想像するほどのありがたみはない。だから、いろんな料理を作って飽きないようにしたいところだ。干物もその一つ。関東に住んでいた10年前、知人にもらって食べた小田原産のアジの高級干物が、僕が経験した最高の魚の味だ。今はその味を目指して、漬け込む塩水やだしのあんばい、干し方などを研究中である。

【最近麻里府で釣った魚】
ボラ63cm、アナゴ44cm、恐らくマコガレイ24cm、ウミタナゴ24cm、マアジ24cm、メジナ20cm、クロダイ20cm、ウマヅラハギ20cm、サヨリ20cm、キュウセン20cm、シロギス19cm、カワハギ17cm、イシダイ16cm、メバル(黒、赤、白ともいるように思う)15cm、チダイ15cm、クサフグ14cm、サッパ13cm、イトヒキハゼ12cm、スズメダイ12cm、マダイ12cm、カサゴ11cm、ハオコゼ10cm、ウミケムシ10cm(環形動物)、ヒトデの一種20cm(棘皮動物