バカ尾根のぼる。
2月にしては暖かい今日、表丹沢の最高峰・塔ノ岳(1491m・神奈川県秦野市)に登ってきた。今回の目的は、丹沢の登山コースの中でも特に登山客が多いという大倉尾根、通称『バカ尾根』を歩くこと。なぜバカって、バカに長くて単調な登り道(約6km!)が続くからとか、バカに階段が多いからとか言うけど、そんな噂を聞いていたらまともに歩きたいとは思わない。そこで、バカ尾根の横にある源次郎沢まで車で行って、そこから天神尾根を登って、途中からバカ尾根に合流することにした。
源次郎沢には10時に到着、さっそく天神尾根を登り始める。するとそこは、手入れのされていない真っ暗なヒノキ人工林だった。急斜面で林内はほとんど植物が生えていないため、土壌の流出が著しく、ヒノキの根が無惨に露出している。人工林調査の仕事にも関わっている僕にとっては、それはそれで良いサンプルを見ることができたけど、一般のハイカーにはとてもオススメできないコースだ。いや、輸入木材の激増で荒廃した日本の森林を知ってもらうためには、むしろ見て欲しいか。
その暗黒の林をようやく抜けると、目の前に明るい草っぱらが広がった。バカ尾根だった。意外にもバカ尾根の第一印象は「んー、気持ちいい!」 暗くて生き物の見えないヒノキ林に対し、バカ尾根は高木が少なくて明るい草原状態。そこには、登山道の侵食による土壌流出を防ぐ土留めがいくつも作られ、ブナやオオバヤシャブシの苗木があちこち植えられ、それをシカから保護するため柵が張り巡らされていた。かつてはこのバカ尾根にも、ブナが茂る立派な森があったのだろう。
国内林業の衰退、シカの異常増加、ハイカーによる過剰利用、大気汚染や温暖化・・・理由は何であれ、丹沢に登るならこうした現実問題をしっかり目に焼き付けておきたい。