ガスの三ツ峠山でカモシカ君に会う
眠くて曇った朝、鳴りやまない目覚まし携帯を手に、今日の山行の是非を迷っていた。でも、今まで山に行って後悔したことはない。そう思って頑張って起きた。行き先は山梨県富士河口湖町の三ツ峠山（1785m）。日本200名山に選ばれているらしく、植物が豊富で前から行きたかった山だ。今日は比較的天気がいいというから、昨晩の23時頃に思い立ったのであった。
自宅周辺の天気はもちそうだったけど、丹沢の山々は雲をかぶっている。こりゃ三ツ峠も雲の中だろな・・・。案の定、三つ峠の麓にある河口湖まで行っても、上は真っ白で何も見えない。標高1300mの登山口に着いた時は、完全なシトシト雨の中だった。雨の用意はしてきたつもりだったけど、スパッツとザックカバーを忘れたことに気付き、やむを得ずカッパに長靴姿、カメラやザックは車に置いて、ウェストポーチだけで登ることにした。今日はじっくり観察に励もう。
森は期待通り植生豊かで、お目当てだったウラジロウコギ、ジゾウカンバ、アラゲヒョウタンボクなども次々と現れる。山頂付近をぐるっと一回りした後、屏風岩と呼ばれる絶壁を見ようとウロウロしていたのだが、ガスで何も見えない。「ここからも何も見えないかな？」と草むらに一歩踏み込んだその時、４〜５ｍ先の正面にカモシカが突っ立っていた。おわっ！ とびっくりして後ずさりしたけど、カモシカ君は平然としている。逃げないとは聞いていたが、本当に逃げる気配なし。草木の葉をむしゃむしゃ食べながら、時々僕のほうを見て「何でそんなに見るの？」という顔をする。やがて前足で地面を少し掘って、そこにしゃがみ込んで草を食べる落ち着きよう。のんびり屋で愛嬌のあるやつだ。
景色は何も見えなかったけど、ガスのお陰か、シシ神のようなカモシカと出会えた。今日もやっぱり山に来て良かった。
