街森研究所

街や森で出会った木々や生き物、出来事などを紹介しています

iPhone vs. Andoroidは歴然の差

 昨年末、私も妻も携帯電話が古くなったので、ようやくスマートフォンに切り替えることにした。さて、アイフォンとアンドロイド携帯、どちらにしよう。私は15年以上前からMacintoshユーザーでiPod touchも使っていた(紛失)が、身の回りすべてを同一ブランド化するのは好きではない。ノートパソコンはWindowsだし、検索はいつもGoogleを使っている。世の中は数的にはアンドロイド携帯の方が多いわけで、iPhoneAndroidを片方ずつ夫婦で持てたらベストだ。

 ということで妻に希望を聞くと、「私はどっちでもいい。アイフォンを持ってる人はこだわりを持ってそうだから、私はアンドロイドでいい」とのこと。では私がiPhoneにしよう。ということでauショップに行く。妻は、カメラをよく使うので写真がきれいなこと、以前ソニー携帯に使い慣れていたことから、お店の人も勧める最新のSonyXperia VL(写真右)を購入。一方の私はiPhone5(32GB)(写真左)を購入。約半年間、両者を使い比べてみた結果は以下の通り。

項目 iPhone5(私) Xperia VL(妻) コメント
発売日 2012年9月 2012年11月 購入はそれぞれ13年1月初旬、12年12月末
画面の綺麗さ ◎ 1136 x 640 ◎ 1280x720 両者美しくピクセル数の違いはわからない
タッチ操作感 ◎ 非常に滑らか × 反応鈍く硬い動き 重要項目だが意外なほど差があった
本体の形大きさ ◎ コンパクト ○ 女性にはやや大きい 画面が大きいことよりフィット感が重要か
充電のもち ◎ 特に不満なし × 1日もたないこと多い 妻は充電器が手放せない
カメラ性能 ○ アプリなどで強化 ◎ 基本性能は上 機能はXperiaが上だが大差はない
OSの使い心地 ◎ シンプルで安定 × やたら表示多く不安定 Androidはバグや強制終了多すぎ
スピーカー音質 ◎ とてもクリア △ ややこもった感じ Xperiaは背面スピーカーで聞きにくい
記憶容量 ○ 32GBを選択 ◎ 32GB+microSDHC まあ32GBで足りないことは普通ない
その他利点 アクセサリが豊富 防水なので風呂で使える 付加機能はエクスペリアの方が多い


ということで、結論から言うとiPhoneの圧勝だった。半年も使うまでもなく1週間でその差は歴然で、妻は操作反応の悪さやOS(基本ソフト)の不安定さ、すぐ充電が切れることに不満を募らせ、「私もアイフォンにすればよかった」と言っている。というか、そもそも「もうスマホは嫌だ」とも言ってるから、好みや相性の問題もあるだろう。

しかし、これからスマホ購入を検討している人がいたら、やはりiPhoneがオススメである。まず、スマホの先駆けだけあって、携帯本体もOSもアプリも完成度が高い。アップルが独占開発するiPhoneiOS+Appストア)には批判もあるが、Andoroid携帯は多メーカーが本体やアプリを作ってるため、規格がバラバラだったり、ウィルスみたいな危険なアプリがたくさんあったりして、非常に煩わしい。これほども違いがあるのかと、正直驚くほどの差であった。

ま、Andoroidには多機種、多機能などの利点はあるし、iPhoneはアプリをダウンロードして使いこなせないとかなり不便なので、スマホを使うか否かも含め、最終的にはやはり個人の好みの問題なのだろう。

ぐるり長崎北西部を巡る旅

 仕事の用事で長崎県に行ってきました。海、島、山に恵まれた長崎県は風光明媚なところですが、今回の旅ではそれを改めて再認識しました。長崎を代表する風景ってどこでしょう? 長崎市街、雲仙、諫早湾などいろいろ思い浮かびますが、写真の九十九島も象徴的ですね。この日は雨もぱらついたのですが、夕方は太陽が雲間から差し込み、この石岳展望台からの眺めはハッとするほど幻想的でした。

【注目樹木】
クスドイゲ、ハクサンボク、シリブカガシ、キダチニンドウ


 遊覧船から眺める九十九島の海岸風景は、宮城の松島によく似た印象でした。岩の小島の上にアカマツやモッコク、シャリンバイなどが盆栽状に乗っています。

【注目樹木】
オオナワシログミ、ハマセンダン、タイミンタチバナ、マルバハギ花


 平戸島に宿泊し、ザビエル記念聖堂などをちょっと散策。島をぐるっと回る時間がなくて残念だったのですが、島の北側の生月島(いきつきじま)方面にドライブしました。写真の橋は生月島を結ぶ生月大橋です。

【注目樹木】
マテバシイ実、アオモジ、バクチノキ、ツルコウジ


 生月島では景色を見ながらドライブ。島の北端にあり、絶景と評判の大バエ灯台に行きました。そこから見える岬と牧草地は、沖縄の万座毛を想像させる景色で、確かに絶景で気持ちのいい場所でした。はるか北方には対馬も見えました。

【注目樹木】
ハマビワ、ハマヒサカキ、クロキ、オオイタビ


 7年ぶりに諫早市(いさはやし)の諫早公園に再訪。ここはクスノキの大木群が印象的で、いろいろな暖地性の照葉樹が豊富なのですが、2度目の訪問で違うルートもじっくり歩くと、よりたくさんの樹木に会うことができ、改めていい森だと実感しました。

【注目樹木】
ヤマヒハツ、シイモチ、ミサオノキ、ジュズネノキ


 諫早公園は珍種ヒゼンマユミが自生することで知られます。幹の直径が50cmを超す大木の大きさも驚きですが、実の大きさにもビックリです。マユミやツリバナの2倍近い大きさでしょうか。これが開くと、朱色の種子がのぞいてさらによく目立つのでしょう。またこの森に来たいと思いつつ、長崎県を後にしました。

三重県で南方系樹木の北限地帯を見る

 夏の暑い盛りの7月31日、南方系樹木の北限自生地が多く見られる三重県を訪れて来ました。調べてみると、三重県内も南方系樹木が多いのは、志摩半島より南の尾鷲あたりのようなので、今回は尾鷲市とその北に接する紀北町をメインにまわってみました。1日だけの強行スケジュールでしたが、北限地帯の生育環境をいろいろ見ることができたので、以下に観察メモと注目種を記録します。



紀北町の豊浦神社を見下ろす入り江に到着。この青緑色の海が熊野灘の特徴なのでしょうか。同じような入り江がいくつも並ぶ地形が続きます。

【注目種】
タチバナ、バクチノキ、イチイガシ、ウドカズラ



続いて、同町の船越海岸の内陸側にある船越池。ここは海岸するそばの海跡湖で、こうした場所に自生する珍木・ハマナツメの大群生があります。写真左奥に見えるのがそうですが、ここのハマナツメは樹高5mを超えており、本当に大きくてびっくりです。

【注目種】
ハマナツメ花、カンコノキ、ハスノハカズラ花



さらに半島の先に向かった集落の外れにある島勝神社に到着。ここでは北限のビロードムラサキを探します。小さな社叢ですが、フラフラと歩いただけでは見つからず、裏手に回ってようやく見つけました。イヌビワなんかと交じって普通に生えていますが、ここではシカの食害が広がっているようです。

【注目種】
ビロードムラサキ花、ミサオノキ、センリョウ



さらに南下し、尾鷲市に入ります。九木崎に向かう途中で、八鬼山の山麓で道路沿いの木を観察。おや、アジサイのように見える花はノリウツギではありませんか。山地に多いノリウツギが海近くまで降りてきて、その下のカンザブロウノキと一緒に生えているのはなかなか新鮮でした。

【注目種】
オンツツジノリウツギカギカズラ、タマミズキ



原生的な照葉樹林が残るといわれる九木崎に到着。入り江の漁港横にある鳥居が、九鬼神社です。ここでは、北限地帯であるツゲモチの大木を見たほか、林内にこれまた北限地帯のミサオノキがかなり多数見られたことが驚きでした。テンダイウヤクの野生化もありました。

【注目種】
ツゲモチ、ミサオノキ、ナギ、ヒロハコンロンカ



紀伊半島を横断して大阪方面に帰る途中で、熊野市の矢ノ川沿いで少し木を見ました。写真は七色貯水池です。林業が盛んな地域なので、伐採跡地も見られますが、その脇の林には、そう簡単には出会えないシロバイやズイナが生えていたりします。ヤマグルマも標高150mあたりまで降りてきていました。

【注目種】
ヤマグルマ、ズイナ、カンザブロウノキ、シロバイ

鹿児島・宮崎の照葉樹林で亜熱帯を感じる

 梅雨の一瞬の晴れ間を縫って、6月22日からの3日間、南九州の鹿児島県と宮崎県で照葉樹林を巡ってきた。まず訪れたのは、マングローブの北限と言われる鹿児島市喜入(きいれ)のメヒルギ林。植物学界ではちょっと有名な場所で、国道沿いに見学用の駐車場や看板もあるのだが、その近くの河口にもっとマングローブらしい群落が見られる。ここは沖縄で見られるマングローブのミニチュアの雰囲気で、とてもいい場所だった。目の前に新しい橋が建設中で開発の波が押し寄せているが、今後は道路からより目立つ場所になるので、むしろ保護が進むかもしれない。

【確認した注目樹木】
ヒルギ、ハマボウ花、テリハツルウメモドキ、ナツフジ


 続いて薩摩半島の先端・指宿市(いぶすきし)にある知林ヶ島(ちりんがしま)の対岸にやってきた。この島は潮が引くと長さ800mもの砂州(さす)で繋がり、歩いて渡れる観光地になっている。思ったより太い砂州で、幅30m前後ありそうだ。島の植物は特に大したことなさそうなので、写真だけ撮って海浜植物を観察して帰る。なお、今回は妻と3ヶ月の息子も初同行した取材旅行だ。

【確認した注目樹木】
マサルトリイバラ、マルバグミ、アキグミ、ホウロクイチゴ


 次は薩摩半島の東南端、ソテツ自生地がある竹山(202m)に来た。こんもり突き出た岩山とは知っていたが、その中腹あたりまで登ると、草ヤブの向こうの断崖絶壁にソテツの大群生地が現れた。これは圧巻の景色だ。背後には富士山型シルエットの開聞岳かいもんだけ)が見え、眼下には露天温泉の湯煙が上がる緑の大地が広がる。不思議と、新婚旅行で訪れたハワイのダイヤモンドヘッドからの眺めを思い出し、指宿市が掲げる「日本のハワイ」というキャッチコピーに納得させられた。

【確認した注目樹木】
ハマビワ、ハクサンボク、クスドイゲ、ハチジョウイチゴ

 夕方、知林ヶ島を見下ろす魚見岳の登山口を散策していた時のこと。突然正面の至近距離から、中型の猛禽類が「ピュピュー」と大きな威嚇のような声を出して飛んできて、頭上を去っていった。巣か餌があるのか!? と思ったら、やはり登山道に食べかけの鳥の死体があった。よく見ると足に黄色と黄緑色の足輪がついている。既に体半分を食べられていたが、ハトぐらいの大きさだったので、オオタカハヤブサなどの猛禽類がレース鳩のドバトを襲ったのかもしれない。

【確認した注目樹木】
モクタチバナ花、アコウ、サツマサンキライ、コウゾ


 翌日は朝から雨。近年恒例の集中豪雨に近い雨の中、世界最大級の照葉樹林が残るといわれる宮崎県綾町を訪れた。ここにある照葉大吊橋(てるはおおつりばし)には5年前に訪れており、このブログでも紹介した。今回はそのつり橋を周回する遊歩道や、その先にある川中キャンプ場も歩いてみた。やはりここはいい場所だ。カッパを着て雲に霞む照葉樹林を眺めるのも味わいがある。これだけの降水量がありながら、川の水が茶色を帯びないのも、原生林が豊かな証拠だ(降雨による土壌流出が少ない)。ただ、長靴にヤマビルが3匹入り込んだのは、シカの増加に伴う懸念事項だ。

【確認した注目樹木】
オオバヤドリギ、ヘラノキ花、ヒュウガミツバツツジ、バイカアマチャ花


 次に目指したのは、亜熱帯植物が多く見られるという宮崎県日南市の虚空蔵島(こくぞうじま)。島と名がつくが、今は港ができて陸続きになっている。九州や四国では、こうした小さな離島に亜熱帯植物が多く見られる傾向があるが、離島が特別暖かいのではなく、離島の森は利用しにくかったので原生林がよく残っているためと思われる。逆に言えば、人が住む本土の森は、神社林などの「鎮守の森」を除けば、過去に一度は伐採された森ばかりと言って過言ではない。

【確認した注目植物】
フカノキ、モクレイシ、コウシュウウヤク、オオタニワタリ


 さらに南下し、串間市の石波海岸の樹林を訪れる。ここは、河口の砂浜の背後にタブノキ林が帯状に広がっており、こうした環境にこれだけ原生的な自然林が残っているのは全国的にも稀だろう。なぜなら、便利な海岸付近の平野部は、真っ先に人間の生活地に改変されてしまうからだ。日没前後の短時間であったが、ジャングルのような豊かな森で、またゆっくり訪れたいと感じた。

【確認した注目樹木】
タチバナ、カカツガユ、ギョクシンカ、コショウノキ


 最終日は、薩摩半島の西端・南さつま市の旧笠沙町方面を回ってみた。天気予報の「一日中雨」は外れ、日中は薄曇りで観察日和となった。梅雨の3日間で雨に降られたのが1日だけなら、上出来の晴れ男だろう。あまり風景写真を撮ってなかったのは失敗だが、亜熱帯性のコクテンギ(写真:開花中)やショウベンノキが林に交じり、ヘゴやバナナの木が集落内に点在したり、野生化したギンネムゲットウが道ばたに見られる風景に、南国沖縄を思い起こさせられた。

【確認した注目樹木】
コクテンギ、ヒゼンマユミ、サクラツツジ、マルバウツギ


 帰途、鹿児島市から九州自動車道に乗って北上していると、桜島サービスエリアをすぎた辺りで、左前方に目を疑うような巨大な水流が見えた。ダムが決壊したようなその爆流は、日本百名瀑にも選ばれている龍門滝という滝だった。急きょ高速を降りて見に行ってみたのだが、ここ数日の降水量でとにかくすごい水量。こんな滝を見るのは屋久島の「大川の滝」以来で、妻は「海外に見に来たみたい!」と感動していた。滝の前にある龍門滝温泉の家族風呂につかり、再び500kmの帰途についた。


 最後におまけ。これは鹿児島県南さつま市内で買った、ニッケイの葉で挟んだ「けせん団子」と、サルトリイバラの葉でくるんだ「かからん団子」とである。ずっと食べたかった念願の鹿児島銘菓で、香りが良くて甘すぎず、とても美味だった。ちなみにこのかからん団子は、亜熱帯性のハマサルトリイバラ(九州南部〜沖縄に分布)の葉が使われていた。

四国南部で照葉樹林の絶景を巡る旅

 いつもブログアップが遅れるのですが、今回は5月11〜12日に旅した四国南部をレポートします。照葉樹林(しょうようじゅりん≒常緑広葉樹林)がもっとも美しいといわれる新緑の季節に、いくつもの絶景を見ることができましたが、中でも最も印象に残ったのが大堂海岸(おおどうかいがん・高知県大月町)から柏島(かしわじま)にかけての風景です。四国の南西端にあたるこの岬は、足摺岬同様に一大観光地になってもおかしくなかったのかも知れません。

【確認した注目樹木】アオギリ、ハマビワ、ハマキイチゴ実、ケサンカクヅル


 愛媛県南部の宇和島(うわじま・愛媛県宇和島市)の海です。南国雰囲気あふれるリアス式海岸が続き、少し川を上ればすぐ1,000m級の山へとたどり着ける、自然豊かな地域です。

【確認した注目樹木】オンツツジ花、トサノミツバツツジサザンカ、ヤナギイチゴ花


 愛媛県愛南町八幡神社(やはたじんじゃ・標高10m)には、四国で数少ないハナガガシの大木があります。社殿の左後方に見える木がそうですが、この孤立した社叢に幼木は見つけられず、真の自生と言える個体なのか疑問を感じました。とはいえ、歴史ある鎮守の森であることは確かですし、幹径40cm級のヤマビワの大木が多いことは特筆です。

【確認した注目樹木】ハナガガシ、イチイガシ、チシャノキ、ツルコウジ


 四国最南端の足摺岬(あしずりみさき・高知県土佐清水市)です。ここに来るのは小学生以来でしたが、岬先端部の宿泊施設が並ぶ集落は、沖縄に似た南国雰囲気もあってやっぱりいいですね。写真はシャリンバイの花です。

【確認した注目樹木】モクタチバナ、ハドノキ花、ショウロウクサギ、バリバリノキ


 足摺スカイラインを走行中に写した写真です。ブロッコリーのようにモコモコしたダイナミックな姿が照葉樹林ならではです。北日本で見られる落葉樹主体の夏緑樹林は、軽やかな爽快感が魅力ですが、南日本で見られる常緑樹主体の照葉樹林は、エネルギッシュなこの躍動感が大きな魅力です。

【確認した注目樹木】アカガシ、イヌガシ、シロバイ、ヒメアリドオシ花


 日本最後の清流とたたえられる四万十川しまんとがわ・高知県四万十市中流域の景色です。いやあ、シイの花と青緑色の川面も対比が鮮やかで、やっぱり美しいです。この流域特有の植物もいくつかあります。

【確認した注目樹木】シチョウゲ、トサシモツケ花、キシツツジ、カワラハンノキ


 四万十市四万十町境界の杓子峠(しゃくしとうげ・標高約460m)周辺の山並みです。四国の中でも高知県は全国有数の林業県で、人工林率は65%と全国平均の41%を大きく上回り、照葉樹林以上にスギ・ヒノキの人工林が多く見られます。伐採跡地もよく見かけますが、これは悪いことではありません。なぜなら私たちは大量の木材や紙を消費している訳で、その約74%を海外に依存して森林破壊問題を引き起こしている以上、できるだけ国産材で賄って再植林するのがベターだからです。

【確認した注目樹木】ヘツカニガキ、フジツツジ、オオフユイチゴ、シナアブラギリ


 今度は四国の東南端、室戸岬(むろとみさき・高知県室戸市)にやってきました。典型的な海岸段丘になっており、先端部の段丘上には四国八十八箇所最御崎寺(ほつみさきじ・標高170m)あり、周辺に良好な照葉樹林が広がっています。

【確認した注目樹木】ナギ、ヤマモガシ、イスノキ、カンザブロウノキ


 室戸スカイラインの途中にある展望台の駐車場に、サカキカズラの花がたくさん咲いていました。本州ではなかなか見られない暖地性のつる性樹木ですが、ここでは藪にまぎれて普通に生えています。ジャスミンのような良い香りがする花です。

【確認した注目樹木】サカキカズラ花、モチツツジ花、ホウロクイチゴ花、カンコノキ


 どうですか、石垣を覆ったこのアコウの根。カンボジア世界遺産タ・プロームではありませんよ、日本の四国で見られる光景です。室戸岬の段丘下の海岸部には、アコウなどの南方系の亜熱帯植物も多く分布しています。岬周辺の乱礁遊歩道(らんしょうゆうほどう)に見られるアコウ林では、大蛇のように岩を覆う気根の光景が圧巻で、ジャングルの雰囲気を味わえるお勧めのコースです。

【確認した注目樹木】アコウ、ウバメガシ、シマサルナシ、オオイタビ


 こちらは室戸市佐喜浜(さきはま・標高約25m)の道路沿いで見かけた低木です。何気ない木に見えますが、蕾をつけたズイナ(ユキノシタ科ズイナ属)という珍しい落葉樹で、これも南日本の山地で見られる暖地性樹木です。同属のコバノズイナは鉢植え庭木として知られていますが、コバノズイナは北米原産です。

【確認した注目樹木】ズイナ、ノリウツギ、ツクバネガシ、タイミンタチバナ


 旅の最後に、高知県東洋町の四郎ヶ野峠(しろがねとうげ・標高約480m)付近で見た景色です。濃緑のスギ人工林の尾根に、明るい黄緑色の広葉樹林が帯のようにぐねぐね連なっています。尾根部の自然林を残して保護したものと推測しますが、あまり見ない光景でユニークです。東洋町といえば、町長が補助金目当てで原発放射性廃棄物最終処分場地に立候補し、住民の猛反発を呼んで中止になったことで知られますが、そんな騒ぎが似合わない自然豊かで静かな場所です。

【確認した注目種】ウドカズラ、シマサルナシ、ツガ、ミミズバイ


 以上、強行スケジュールで一つ一つの森をゆっくり観察できなかったのが心残りですが、また改めて訪れたいと感じた良い場所ばかりでした。個人的に四国は好きです。

考えさせられる引越;広島県廿日市市へ

 しばらくブログを留守している間にいろいろあり、3月に子どもが生まれ、4月から広島県廿日市市(はつかいちし)の旧大野町へ引っ越しました。世界遺産で神の島といわれる宮島の対岸です。写真の左端に見える島が宮島で、中央奥は周防大島、右端は本州の山口県方向です。

「子どもが生まれた直後に引越とは大変でしょう」とよく言われますが、引越の理由は、子どもの誕生でそれまでの2DKアパートが手狭になったためです。僕の場合、住居兼仕事場だし、庭もほしかったので、子どもを持つなら一軒家に住みたかったのです。広島県というのはたまたま。妻には「海が見える家」という強い希望があり、山口県内でも下関市まで探したのですが見つからず、広島県も探してみた時に今の物件に出会ったのです。まあ、夫婦とも引越好きで都会も好きなので、これまでとは違う都市圏に住んでみたいという思いもありました。

今回の引越条件と、その評価をメモしておきましょう。

  1. 仕事部屋が確保できる借家で、家賃7万円以内・・・○
  2. 木や野菜が植えられる庭がある・・・◎
  3. 通信環境や交通の便がよい・・・○
  4. 自然豊かで閑静な環境・・・△
  5. 子育てによい環境・・・△
  6. 海が見えて景色がよい・・・○
  7. 近隣住宅からプライベートが確保されている・・・○

 6と7は主に妻の要望です。で、実際にここ廿日市市南部に1ヶ月住んだ感想はというと・・・うーん、いろいろ考えさせられました。「いい所でしょう?」と問われて、すんなり「はい」とは言えないのが本音です。敷地内はいいのですが、問題は敷地外にありました。4キロ南にある大竹市の工場地帯の悪臭と、12キロ南にある岩国米軍基地の騒音です。初めて物件を見た時から「近いな」と気にはなっていたのですが、何度か下見をしたときは気にならず、実際に住んでみてかなり気になったのでした。

 朝起きて、庭に出ると「ん、ナンだこの臭いは?」と感じることがしばしば。下水のような臭いと、金属系薬品のような臭いの2種類が主にあります。発生源はどの工場かわかりませんが、風向きによって変わるようです。ここ10年くらいは空気がきれいな郊外に住んでいたので、深呼吸して「空気が美味しい」と思えないのは悲しいことです。

 ちなみに、4月22日未明に岩国大竹コンビナートの三井化学工場が爆発した時は、爆風で窓が大きな音を立てて飛び起きました。下の写真は、その翌日に事故現場そばを訪れた時の写真ですが、重さ6tの金属片が約700m離れた川岸に吹き飛ばされていました。

 日中は米軍の戦闘機が頭上を飛ぶのもしばしば。これは想定していましたが、夜11時ごろにも飛んだ時はカチンと来ました。世界平和のために、基地や戦闘機が、寝ついた子が目を覚ますことが本当に必要なのでしょうか。いつまでも兵器を手放せない人間の愚かさを憂えてしまいます。なお、下の写真は岩国基地の日米親善デーでアクロバット飛行をする自衛隊ブルーインパルスです。

 それと、もう一つ不便に感じるのは、周囲に店が少ないこと。不動産屋さんからも「陸の孤島だよ」とは言われていましたが、車で5分以内の場所は本当に店が少ない。30分も走らせれば広島市内でデパートや大型店がたくさんあるけど、日常生活圏は地元の山口県光市や柳井市よりも不便と感じました。大都市郊外にはありがちなパターンかもしれませんね。

 悪いことばかり書きましたが、もちろんいいこともたくさんあります。家は今までになく広いので、仕事も生活もゆとりをもてるし、庭で家庭菜園ができるのは嬉しい限り。広島市が近いので、山口県にはなかった大型書店や植物園、各種専門店、大学主催の植物観察会などにも行きやすくなり、様々なプラスになります。今年は広島修道大学で非常勤講師もやらせてもらってるし、広島市圏に住めるのはワクワクします。広島カープサンフレッチェ広島の情報がテレビ・新聞で豊富に入るのも、一ファンとして大きな魅力です。

 今回の不動産屋さんは、方位を重視する九星気学のマスターで、「あなたはいま北東方向(光市→広島)に引っ越せば、いい出会いに巡り会えます」と言われました。いろいろ考えさせられることはあっても、広島に来たことで得られる出会いを、ここに住むであろう数年間でたくさん見つけたいと思います。

命の誕生に立ち会って


 2012年3月3日18時42分、我が家に第一子となる男の子が誕生した。妻の妊娠から毎月の定期検診、そして出産まで、僕はそのほとんどに立ち会い、感動した。
 もともと、出産は恐くて男の入る世界ではないと思っていた。その考えが変わり、絶対に立ち会いたいと思うようになったのは、超音波検査で胎児の姿を見たり、つわりや心身の変化に向き合う妻の苦労を感じたり、お腹に耳を当てて鼓動を聞いたりしたことの積み重ねと思う。

 はじめ妊娠した時、妻は原因不明の身体中の痛みや蕁麻疹に襲われた。 それは、まるで体内の毒を吐き出しているようにも見え、僕は直感で「もしかして妊娠?」と思っていたら、やっぱり妊娠検査薬で陽性だった。結婚より先だったが、僕は運命が舞い降りたと思った。

 妊娠直後は3mmぐらいだった小さな粒が、やがて魚のような形になり、小刻みに動く心臓を見た時はどれほど感激したことか。これは超音波検査などの医療技術の進化の賜物だろう。一方、昔ながらの戌(いぬ)の日参りや安産祈願が、今も当たり前に行われていることを僕は知らず、いろんなベビー用品を買って準備するのも当然初体験で、新しい世界を知る気分だった。
 妊娠7ケ月の時には、妻の強い希望でハワイ新婚旅行を決行。出発前は腰痛があり、空港で車イスを借りたりもしたが、ハワイ到着後は不思議と改善し、トラブルなく楽しむことができた。子どもができたら母親は自由がなくなる、という切実な思いも学んだ。そしていよいよ、予定日の3月5日が近づいてきた。

 出産3日前。妻に、弱い陣痛のような痛みが数十秒おきに来始めたが、病院に電話すると前駆陣痛と呼ばれる前ぶれと言われた。その痛みは少しずつ増し、妻は丸2日間ほとんど眠れない状態が続いた。そして出産前日の夕方、おしるしと呼ばれる赤い排出物が出て、入院となった。今晩か明日中に出産と告げられ、気持ちが高まる。妻の睡眠時間が極めて短いことを不安に思い、僕が病院の先生に話したら、出産の時は大丈夫、と言われた。これが女の火事場のくそ力なのか。

 心に傷があって、人一倍、不安や痛みを敏感に感じやすい妻は、和痛分娩と呼ばれる、麻酔で陣痛の痛みを和らげる出産法を希望していた。3月3日の朝9時、まだ前駆陣痛の状態で、まずは陣痛促進剤を点滴。陣痛が本格化してくると、次は背中から脊髄に麻酔用の管を注射で入れる。これも痛そうだが、妻に言わせれば陣痛の痛みでさほど気にならなかったらしい。麻酔でかなり痛みが和らぐのかと思いきや、そうでもないみたい。陣痛はどんどん大きくなり、妻もうめき声をあげる。2時間おきの麻酔が近づくと、汗びっしょりの妻は「先生〜麻酔〜!」と悲痛な声をあげた。分娩台で少しだけ昼ごはんを食べた後、助産師さんの指導でいよいよ「いきむ」作業が始まった。陣痛に合わせて息を止めて、思いっきりいきむ、間髪入れずそれをもう一回。聞いたことない妻の力強い声がこだまする。

 そして分娩室に入って約9時間。ついに赤ちゃんの頭が出始めた。その状態を僕も見せてもらったのだが、開きかけた出口から、黒い髪の毛が少し見えている。驚きである。今まで映像でしか見てなかった赤ちゃんを、初めて実物として見た瞬間だった。しかし、ここで膠着状態が続き、妻は会陰切開(出口をハサミで切って広げる)と吸引(赤ちゃんの頭に吸盤をつけて引っ張る)を行うことに。初立ち会いの僕にはとても直視できる作業ではなかったが、赤黒くなった赤ちゃんの顔が出たら吸盤をはずし、妻(と赤ちゃん)が自分の力で出産、にゅるっと胴体が一気に出てきて、口の中をスポイドで吸うと、元気な産声をあげた。3,340gの元気な赤ちゃんの誕生だ!

 この一連の過程、文章で書くと簡単だが、実際に立ち会った僕には、どれも初めて見る衝撃シーンだ。最後に出てくる瞬間は、自然に涙があふれ出て止まらなかった。泣くとは聞いていたが、こんなに泣くとは。後で録画したビデオを見ると、最後は妻の声以上に僕の鼻息が荒くて、こんなに興奮していたのかと恥ずかしくなった。
 赤ちゃんはママの胸に抱っこされると、泣き止んで穏やかな顔になった。ママの温もりが分かるのだろう。でもその顔は、小さなサルのようで、僕にはまだ「自分の子」という実感はわかなかった。



出産3日後の赤ちゃん